【キーワード】業績評価

業績評価の正しいあり方

組織における評価は、メンバーのモチベーションや業績(パフォーマンス)のあり方に大きく関わっている。

メンバーにとって、自分の努力がどのように業績につながり、その業績がどういった報酬に結びつくかは重要なポイントである。

まず、自分が努力することであげられた成果が、自分あるいはチームに帰属して業績として評価されるかどうかである。

組織には、他人の成果を自分のものにすり替えるのが得意な人物もいる(「あれは俺がやった」「あいつは何もしてない」)。そして、より上の視点からでは横取りした人物の業績に見え、評価される傾向にある(元々がそのようにして成り上がった人物なので、上からの覚えはめでたいとなおさら厄介である)。

そうなると、成果をあげた本来のメンバーは、組織から期待されていることは自分やチームのために努力をすることではなく、その人物のために努力することだと感じ、モチベーションが下がる。業績評価につながらないだけでなく、報酬にも結び付かないからだ。

 

評価の仕組み4つのポイント

逆に、自分の努力がどのように成果に反映され、業績評価によって報酬が得られるかを体感できれば、モチベーションの維持・向上につながる可能性は高い。

そのポイントは次の4つである

  1. 何を期待されているかをメンバーが知っている
  2. 業績がどのように測定されるかをメンバーが理解している
  3. 自分の努力の範囲内で、納得かつ満足のいく業績が達成できると思える
  4. 要求された業績を達成したら、自分が価値を置いている報酬が得られる自信がある(メンバーが価値を置く報酬は金銭的なものとは限らない場合もある)

 

避けるべき4つのポイント

評価上で避けるべきポイントは4つある。

  1. メンバーが追い求める目標が不明確である
  2. 目標に対する評価基準があいまいである
  3. 自分の努力だけでは求められる業績達成ができないと思う
  4. 業績目標が達成されても、満足のいく報酬が得られないと感じる

これらの条件が揃った場合、メンバーのモチベーションや生産性は下がり、能力以上はおろか、それに見合わない成果しか出せない仕事をすることになると予想される。

組織内の評価制度や仕組みを考えた場合に、避けるべきポイントに当てはまってしまうならば、仕事の進め方から考え直す必要がある。

具体的に言えば、目標の共有がどの程度明確になっているか、どのようなプロセスをたどることが望ましいかをメンバーが理解しているか、そもそも掲げられている目標はメンバーの手におえるものなのか、メンバーが望む報酬が提示され、得られているのか、などである。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】精神性

精神性(せいしんせい)

精神性とは、人には内面的な生活があることを認識し、自らが所属する共同社会において有意義な仕事をすることで、そのような内面的な生活を充実させることができるとする考え方である。

精神性を重視する組織文化では、人は頭と心で考える存在であること、自分の仕事に意義や目的を見出そうとすること、自分以外の人とかかわりを持ち、共同社会の一メンバーでありたいと望んでいることを認識する。

これまで、ビジネスや組織経営においては精神性をことさらに取り上げられることがあまりありませんでした。しかし、人の感情を理解することで、組織における人々の行動をより理解することにつながることがわかっている。

 

精神性はなぜ必要か?

それではなぜ、精神性についての議論が現代で高まってきたのか?
様々な理由はあるが、主に次に掲げることがポイントとなる。

  1. 不安定な生活ペースから来るプレッシャーやストレスに対してバランスを取るため
  2. 一人親家庭、地理的な移動、一時的な雇用、対人間の距離を生んだ新技術など、現代のライフスタイルにより、多くの人が共同社会の欠如を感じ、人との関わりやつながりを求める欲求が高まっている
  3. 特に年齢層が上の世代で、自分たちの生活の中に何か特別なものを求めている
  4. 多くの人が必要に迫られて仕事中心の生活を送っているが、仕事の意義について絶えず疑問の念を抱いている
  5. プライベートな価値観を仕事生活にも反映させたいという欲求
  6. 経済的に恵まれた時代には、多くの人に最大の可能性を模索する余裕も生まれるから

つまり、時代の変化によって現代社会におかれた人々の感じ方や価値観が変わってきていることによると考えられる。

時代と人の変化に対応するため、精神性はひとつの重要なキーワードとなっている。

 

精神性を重んじる文化の特徴

精神性を重視する組織と、そうでない組織の違いについては、次の5つの要因があるとされている。

1. 目的意識が強い
精神性を重視している組織は、有意義な目的を文化の中心に置いている。利潤も重要であるとしながら、最も価値を置く基準ではない。

2. 個人の成長を重視する
人間は価値ある存在であると認識している。組織メンバーにただ仕事を与えるだけでなく、彼ら・彼女らが絶えず学び成長していくことのできる文化の構築を目指している。また、人材の重要性を認識して雇用保障にも努める。

3. 信頼と開放性
相互信頼、誠実さ、開放性を備えている。経営者や管理職は自らの過ちを認めることを恐れず、部下、顧客、取引先に対して非常に率直な態度で臨む傾向にある。

4. 組織メンバーへの権限委譲
精神性を重視する組織は、高い信頼関係が存在し、従業員が学び成長することを奨励する環境が整っている場合、経営陣は業務における大半の意思決定権をメンバーに委譲することになる。

精神性に基づく組織の経営者は、部下やチームに権限を委譲することに不安を抱かない。部下が思慮深い良心的な決断をくだすと信じているからである。

5. 感情表現に対する寛容さ
組織メンバーの感情を抑制しない。組織はメンバーに対し、自分自身であること(アイデンティティー)、つまり自分の気分や感情を表現することを認めている。

 

精神性と利益は両立するのか?

感情や仕事の意義・目的などのソフトなテーマが、利潤の追求というシビアなものと両立可能なものかどうかは、経営者や投資家にとって大きな問題となる。ケースは少ないものの、両者はかなりの割合で両立可能であることがわかっている。

ある調査研究によると、精神性に基づく手法を導入した企業は生産性が向上し、離職率が大幅に低下したという。また、別の研究では、従業員に対して精神的成長の機会を与えた企業は、そうでない企業よりも高業績を上げることがわかった。

さらに、組織における精神性が創造性、従業員の満足度、チームの業績、組織のコミットメントによい影響を与えることが報告されている。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】キャリア用語集

キャリアデザイン

キャリアデザインは、自分自身のキャリアを成功に導くために、公私を含んだ目標を描き、そのプロセスを具体化することである。

キャリアの成功とは、自己イメージ(アイデンティティ)と照らし合わせた基準で考える。

それは、仕事に「うまく当てはまっている」状態で、かつ、自分自身で納得できていることである。「他人より多い収入」とか「同期よりも早い出世」とか「名誉ある地位」とか「あふれるほどの資格」とかではない。仕事を通じて生きがいや充実感を得ることであり、さらには私生活でも自らが描いたイメージを反映することも求められる。

ただし、キャリアが成功したという実感は、キャリアの初期に感じることはまずない。むしろ晩年になって自分の職業人生を振り返った時に実感することの方が多いと思う。それだけわかりにくいものだが、早く実感できないと焦ってしまう。

もちろん、その過程ではジレンマに陥ることもある。実際に働いたり、年齢を重ねる中で現実を知り、どちらかを取ればどちからを捨てざるをえないトレードオフの関係を痛感することもあるだろう。しかし、キャリアデザインはそのような制約をいったんは外して考えてみることが重要で、キャリアの成功を実現するために、どのような仕事や行動が必要か、それをはっきりさせることが目的のひとつでもある。

キャリアを成功させる方法は、年齢・キャリア段階に応じて、適切に行動し、能力を高めていくことが必要で、節目に沿って、過去のキャリアデザインを振り返り、追加・修正を行うことが大切である。

キャリアパス

その職場に用意されている職位や仕事の将来的な一連の道筋のこと。

キャリアパスを全く描けないと将来に望みをなくしてしまい離転職につながる場合もあるが、先が明らかに見えてしまいモチベーションが維持できなくなることもある。キャリア開発の一環として、キャリアパスの構築を支援、あるいは促すことが企業でも行われている。

 

キャリアプラトー

組織内ではそれ以上の昇進が難しい位置にたどり着くこと。キャリアパスの最終地点とも言える。

個人の選択は
①そのまま維持する
②組織内外へのキャリアチェンジを図る
③別のキャリアを歩む
となる。

 

キャリアチェンジ

組織内での職種変更(開発→営業など)または組織外への同・異職種への転職。

自らの意思で行ったものとそうでないものも含む。

 

キャリア転換

キャリアチェンジよりも広い概念で、次の4つを指す。

①人生の役割の変化
②人間関係の変化
③日常生活の変化
④自己概念の変化

たとえば、昇進・昇給、離転職、失業、異動・転勤、結婚、出産、子どもの自立や定年など、公私含めたキャリアに沿った節目となるイベントが、キャリア転換には含まれる。

 

役割葛藤

個人が果たすべき一連の役割の中で矛盾が起きること。

専門職でいつづけることを望む人が、管理職のキャリアに進んだ場合やそれを会社から望まれた場合などに起きうる。

 

社会化

個人が組織に適応する、または、適応させられることを意味する。組織の価値観を受け入れ、守るべきルールを内面化するプロセス。

一方で、個人が給与や地位、やりがいのある仕事を得るため積極的に組織人になろうと努力する過程でもある。

社会化にかかる時間は個人差がある。社会化が成功するとおおむねキャリア発達に示される道筋をたどり、失敗すると適応障害を引き起こしたり、ワーカホリックのような過剰適応を起こしたりする場合もある。

組織にとっては生産性の上下、離転職にかかわるもので、メンバーの社会化プロセスは非常に重要な意味を持つ。

 

ワーキングプア

生活保護以下の低賃金で働かざるを得ない人々。社会化を受ける機会が全くないため、キャリアを考えることが実質的に不可能である。組織内の問題だけでなく、貧困化や教育格差等、社会においても負の連鎖が起きる。

キャリア形成や社会化の概念は正規雇用の人たちだけのためにあるわけではなく、組織は非正規雇用の人たちの社会化も考える必要がある。あるいは、国や地方公共団体等の積極的な支援が必要とされる局面に日本の社会はすでに来ていると考えられる。

 

ジェンダー・ギャップ指数

世界経済フォーラム(http://www.weforum.jp)が毎年発表している、国別の男女間の格差の大きさを示す。女性の経済への参加、雇用の機会、政治的な権限、教育の機会、健康について指数化したもの。

2013年指数ランキングでは136国のうち、北欧を中心に欧州国の順位が高く、5年連続でアイスランドが1位。アジアではフィリピンが5位で、中国が69位、日本は105位、韓国が111位となっている。

 

ジェンダー不平等指数

国連開発計画が「人間開発報告書」で毎年公表するもの。保健分野、エンパワーメント(権限委譲)、労働市場の3つにおいて、国家の人間開発が男女の不平等によってどの程度妨げられているかを示すもの。

日本は148ヵ国中総合21位(上位ほど優れている)で、保健分野が非常に優れているものの、男女共同参画においてはまだまだ課題が残されている。

 

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】キャリア・アプローチ

キャリアのリスクとアプローチ

かつての日本では、リスクを好まない大多数の人々によって会社が支えられ、会社による恩恵を受けることで個人は自分の生活や家族を支えていた。

これは入社から定年まで会社が応え続けるという前提に裏打ちされて成り立っていたものである。そのような会社では、個人はその組織において有効な知識や技能を身につけ、それに磨きをかければよかった。

しかし、その組織で磨かれたスキルは必ずしも他の企業で求められるものとは限らず、かつて企業と個人の関係を支えていた前提が、ほとんどの企業で崩れた現在の状況では、むしろ特定の組織内でのみ有用なスキルを身につけて組織外で通用するスキルや知識の習得に熱心でないまま働き続けることが、個人の将来キャリア上大きなリスクを伴うことになる。

この状況について、会社の責任にすることも容易だが、それを叫んだところで何も変わらない。前向きな視点に変えて、様々な選択肢の中から個人が自らのキャリアを選び取って、自分の生き方に責任を持つ時代になったと考える方がより生産的だろう。

このような状況を打破する裏技はない。地味ではあるが、組織と個人ができる具体的なアプローチを以下に、個人と組織の別で掲げる。

個 人
1. 己を知る
自分の長所と短所を理解する。PRできる能力・スキルは何かを正直に明らかにする。一人で客観的に行うのは難しいため、組織外の人にキャリア相談すると進みやすい。
2. 自分の評判を把握する
自慢にならないように、自分の業績や功績を組織内外の人にPRしてみる。できればフィードバックをもらう。
3. 人脈を構築・維持する
地元、専門職、交流会、セミナーなど組織外での人脈づくりに努めること。
特に、「社外」でのコミュニティを意識することが重要。
4. 最新の技術を身につける
需要の高い特定のスキルを身につける。他の組織では即戦力とならないような、ある組織でのみ通用するスキルの習得は避ける。
5. スペシャリストとしての能力とゼネラリストとしての能力をバランスよく身につける
専門分野だけでなく、変化する職場環境に多面的に対応できるように他分野の能力も養う。
6. 自分の功績を記録する
やりがいを高め、自分の能力を客観的に証明できる仕事や業績を記録しておく。定期的に仕事の棚卸をするとよい。
7. 選択肢を広げておく
最善を望み、最悪に備える。いつ何が起きても大丈夫なようにすること。
「会社がつぶれても生きていける」状態をつくりだす。
組 織
1. 組織の目標や将来的な戦略を明確に伝える
メンバーが組織の方向性を理解すれば、そうした将来像に合わせて個人的な計画を策定することができる。
2. 成長機会をつくり出す
社員に、新しく興味深く、かつ専門的にやりがいのある業務経験の機会を提供すること。
3. 財政支援を提供する
最新のスキルや知識を身につけるための支援策として、奨学金制度または支援金制度を設ける。
4. メンバーが学ぶ時間をつくり出す
有給で職場外研修に参加させる。また、仕事の負荷を軽減させ、従業員が新しいスキル、能力、知識を身につけるための時間的余裕を持てるよう配慮する。
5. キャリアセンター等の支援の場をつくる
社員のキャリア上、役に立つ最新の情報を提供したり、相談に応じてキャリア開発を支援したり、定期的なセミナーを実施するような交流の場をつくる。

基本的に、組織ができることはメンバーを自立させ、継続的にスキルや知識の習得を促すことで社員が自分の市場価値を維持する手助けをすることである。

一方で、個人ができることは自分を個人事業主のように考え、自分自身でキャリアを管理し、伸ばしていくという責任を持たなければならない。

 

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】キャリアの法則

キャリアの法則

組織内部には、個人のキャリアを考える上で次の2つの法則が存在する。

どちらも、あまり前向きなものではないが、組織の現実を知るためには重要な手がかりとなる。これらをどのように打ち破るのか、組織と個人にとっては、大きなポイントになるだろう。

ガラスの天井

天井がガラスでできているため通常は目に見える形で存在せず、気が付けば頭を押さえつけられ、それ以上は登ってはいけないという構造。

主に女性の管理職登用や学歴による昇進差など、能力とは無関係な属性によって差別的にもたらされる限界のことを指す。

○組織的な対処

能力とは関係のない理由でキャリアに限界を設定することは理不尽と考えられ、またガラスの天井によって企業は損失をこうむっている可能性もある。

一般的に、女性管理者の方が男性よりも評価が高い傾向があり、また女性の役員が多い企業は少ない企業よりも収益力が高いことが報告されている。

したがって、組織としてはガラスの天井を取り払い、機会をオープンにすることが最善策かもしれない。

ピーターの法則

人は、それぞれ無能のレベルに達するまで昇進するということ。

無能とは、組織に貢献できないことを意味する。組織の中で限界を感じる人や感じさせる人は、むしろ圧倒的多数を占めるというべきで、すべての人が情熱的かつ有能に働くような組織はない。

しかも、有能かどうかは組織内部における相対的なものでもあり、また個人の成長によって変化することもある。

組織において振るわないメンバーは、ローパフォーマー(低業績者)として認識される。ローパフォーマーは、個人としてそのことに気づくことと、その認識をもとにどう向上していくかが課題となる。

○組織的な対処

その組織の中で能力を発揮できず無能とされる人も少なからずいるのは事実であるため、その現実から目を背けずにどのように処遇するか決めなければならない(人的資源管理)。

能力発揮のために早めにメンタリング(※)やコーチング(※)によって指導を行うか、本来的に適性がないのであれば組織外に可能性を見出すように促すことも一策となる。

ローパフォーマーをどう扱って対応していくかは、制度や組織文化にかかわるコアな部分であり、その考え方や方針によって、メンバーのモチベーションやキャリア形成に影響を与える。

※メンタリング:仕事において、経験豊かで知識、影響力を有する人が、それを持たない若者を個人的に援助し、キャリア発達を促進すること。非公式の人間関係によるもの。相性の問題もあり、必ずしもプラスに働くとは限らない。

※コーチング:ある人が目的を達成するために、それを支援する役割を果たすこと。経営者の育成や部下の指導法などに使われる。

 

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。