【キーワード】依存

組織内で力を発揮するには、依存がカギとなる。なぜなら、依存は偏った力関係を生むからだ。対上司、対組織、対取引先などあらゆる場面において依存関係を生み出すことは、業務を望みどおりに進めたり、交渉を有利に進めたりすることができる。

では、依存はどのような場合に生じるのだろうか?

一般的に、Bの必要とするものをAだけが支配している場合、BをAに大きく依存させることができ、圧倒的な力を得られる。しかし、もしBの必要とするものをCやDも持っている場合、Aは力をそこまで大きくすることはできない。

つまり、依存は代替的な供給源の多さと反比例する。誰もがスーパープレイヤーであればうまくプレーできることに利点はないし、お金持ち同士ではお金が力にならない。

依存を生むもの

それでは、何が依存を生むのか具体的に見てみよう。

① 重要性

Aが支配しているものを誰も欲しがらなければ、Aは誰に対しても力を持つことはできない。

依存を生むには、相手から重要と見なされるものを支配しなければならない。組織は不確実性を避けようとする傾向にあり、その不確実性を吸収できるような個人や集団は、組織において重要な資源を支配している。

たとえば、製品・サービスが売れるかどうかは企業にとって致命的な不確実性であるため、マーケティング部門が最大の力を持つ可能性がある。化粧品や健康食品ではマーケティング部門が最も強力とされる傾向にある。

一方で、自動車メーカーや電気機器メーカーなど技術志向の組織では、製品の品質を維持するためにエンジニア集団が組織内で影響力を持ったり、労働争議では労務交渉者や人事部門が大きな力を持ったりする。

② 希少性

他にないもの、なかなか手に入らないものを支配しなければ依存は生まれない。力を得るには、その資源が希少性の高いものと見なされる必要がある。

組織においては、序列の低いメンバーが、序列の高いメンバーに対して力を持つケースがある。たとえば、上司や先輩が、仕事で重要と考える知識や情報を入手しなければならないときに当てはまる。

また、序列の低いメンバーが、自分の存在の希少性を高めるために一見不合理と見える行動を取る。たとえば、マニュアルから離れて自分流のやり方で実施したり、他人に仕事を教えなかったり、自分の仕事の内容を囲い込んだり、自分たちにしかわからない専門用語を使ったり、周りから何が行われているかわからないよう秘密裏に業務を行ったりする場合などである。

③非代替性

ある資源のうち、他に替わるものがないものを支配すると力が増大することになる。

たとえば、原油の採掘資源を支配していた国は、これまで代替エネルギーがなかった(あってもコストパフォーマンスが悪かった)ために、石油資源を持たない国に対して力を発揮できた。しかし、シェールガスや水素、太陽光など様々な代替選択肢が増えたことから非代替性が失われ、影響力を低下させたと考えられる。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】力の源泉(私的な力)

力は、公式の地位や権限から生まれるとはかぎらない。

組織においては、そのような形式的なものに頼らずに力を発揮できる人物が必ずいる。そのタイプの人物は、私的な力を持っていると言える。

公式の力を手に入れる可能性がところ低いが組織で力を発揮したいと考える場合や、公式権力を手に入れたとしても名実ともに備わったリーダーを目指したいと思う人には、次の3つの力が参考になるだろう。

① 専門力

専門力とは、専門技術や特殊なスキル、知識を持つ結果として行使される影響力を指す。世界的にも、日本国内においても技術志向が高まるにつれて、専門技術は最も強力な影響力の源となっている。

また、仕事が専門化するにつれて人々は目標達成のために「専門家」に依存するようになった。大半の人が医師の助言に従うことは、医師が専門技術を持つことで力を行使しているし、IT専門家、税理士、弁護士、産業カウンセラー、その他の専門家なども専門知識によって影響力を持つことができる。

そして、そのような資格が専門力を表すパターンだけではなく、組織においては周囲から認められることで発揮できる専門力もある。すなわち、ある個人特有のスキルであったり、考え方、情報と知識をかけあわせて発信できる能力などが当てはまる。

ともすれば、仕事や知識を囲い込んでいるとも思われかねないが、「〇〇のことはあの人に聞けばいい」と言われるくらいまで自分の知識や能力を磨くことは非常に重要と考えられる。

② 同一化による力

AがBにとって好ましい資質や個性を持つ場合、BはAと自分を同一化させる(同じようになりたいと思う、あるいはモデルとする)。この場合、BがAを高く評価してAを喜ばせたいと思うため、AはBに対して力を行使することができる。

同一化による力は、他人への賞賛やその人のようになりたいと思う欲求から生じる。野球少年たちはイチローが使っているメーカー製品を同じように使いたいと思うだろうし、人気モデルや歌手のファッションを真似するなど、同一化による力がいつの間にか行使されている例は枚挙にいとまがない。

同一化による力を発揮するには、組織においてある程度の存在感を持つ必要がある。したがって、これは一朝一夕で身につけられるものではないだろう。

③ カリスマ性

カリスマ的リーダーは、部下を追従させるための力を持っている。

魅力的なビジョンを明確に表現できる、個人的リスクを取る、環境やフォロワーに対する配慮を示す、型破りな行動を取る意欲などが当てはまる。

しかし、多くの企業には公式のリーダーとしての地位はなくても、カリスマ的な資質を持ち、それを強みとして他人に影響を与えている人もいる。

カリスマ性は、持って生まれた資質やパーソナリティ(性格)、教育訓練、自己研鑽など様々な要素を含むため意図的にこういった力を持つことは難しいかもしれない。

したがって、私的な力を持つための第一歩は、やはり学習や積極的な経験獲得などの「自分を磨くこと」から始まるのではないだろうか。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】力の源泉(公式の力)

なぜ人は社長や上司の指示を受け入れるのか?もし、ルールからやや外れることをするように命令を受けた場合、それを実行するだろうか?

ここでは、力がどこから、どのように生じるのかを分類して取りあげる。

力の源泉には、公式の力(組織内の地位にもとづくもの)と私的な力に分けられる。まず、公式の力を見てみよう。

① 強制力

強制力は、相手の恐怖心を利用する。相手が強制力に反応するのは、「従わなければ良くない結果が起こるかもしれない」という恐怖心からである。

組織では、メンバーに対して解雇や停職、降格などができる場合に強制力が生じる。ただし、行使される側がその仕事に価値を見出してない場合は当てはまらない。

また、AがBの嫌がるような仕事をさせたり、Bにハラスメントを与えるような扱いをする場合にも強制力があると言える。

② 報酬力

強制力とは全く逆に、そうすることでメリットが生まれるので他人の望みや指示に従う場合には、報酬力が発生している。

したがって、AがBの目から見て価値のある報酬を与えることができるとすると、AはBに対して力を持つ。

他者が価値を見出すものであれば報酬は何でもよく、金銭的報酬(昇給、賞与)と非金銭的報酬(認知、昇進、希望する仕事の割当て、親切な同僚、優遇された勤務待遇や販売担当エリアなど)がある。

③ 正当権力

最も一般的に考えられるのが、組織が定める地位を通じて得る力である。取締役や部長、課長などが当てはまる。これを正当権力と言う。

正当権力には権威があるが、大体の場合は強制力と報酬力も備えており、さらに広い範囲で力を持っている。

それは、組織メンバーが職位権限を容認している場合が当てはまる。会社の社長や行政のトップ、学校の校長などが何かを言った場合、その内容が職位権限の範囲内であるとみなされる限り、話を聞いて従うことになる。

④ 情報力

情報へのアクセスを制限したり、情報のコントロールを行ったりできる場合は情報力を持っていると言える。

組織において他人が必要とするデータや知識を持つ人は、他者を自分に依存させることができる。階層が上のマネジャーである人ほど、経営上の重要な情報(売上、利益、給与など)を入手できる特権を持つことが多いため、そのようなデータを利用して部下の行動をコントロールしたり、方向づけしたりすることができる。

不確実性が高い時期に企業の業績に重要な情報を持つ部署、すなわち組織の再編時の経営企画部や重大な訴訟に直面しているときの法務部、M&A時の財務経理部、労使交渉時の人事部などは、不確実性が取り除かれるまでの間、組織における力を増やすことになる。

 

公式の力を手に入れるためには

力はあくまでも手段である。それが私欲であれ、公共の利益を実現するものであれ、何らかの目標を達成するために力は必要となる。

他者の支配欲が強いかどうかも、力を欲しがることに関係している。

いずれにせよ、組織で生き残るためには力が欠かせない。

新卒や中途で非マネジメント職として入社した場合は、公式の力として持てるものの範囲は狭い。

したがって、表面的な力を発揮するためには昇進・昇格が力を手に入れる最大のチャンスとなる。

しかし、上記の力のうち「情報力」だけは、どのような地位のメンバーでも身につけることができる。物事が進むスピードや変化が速い時代だからこそ、かえって情報力がものを言う。

組織内における影響力を増やしたいと思うのであれば、情報力がカギとなるだろう。具体的には、積極的な学習によって知識やノウハウを身につけたり、周囲の人が接する機会のない自分だけの人脈や情報源を手に入れたりすることが重要となる。また、上司や周囲のメンバーに関する非公式の情報(お酒に目がない、ゴルフが趣味、子どもが2人いる)も思わぬときに力を発揮することがある。

普段からの学習や情報収集をいかに習慣としているかが重要と言える。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】力(パワー)

人が2人以上集まれば、そこには必ず力関係(パワーバランス)が生じる。

組織ではそのパワーバランスのもとに、自己の目標を達成したり、組織の共通課題を解決したりすることが行われる。ここでいう力とは、地位等から生まれる公式的な権力だけではなく、地位に頼らない人間関係下ではたらく非公式な力をも含んでいる。

力を行使する人は、それを当然のものと思っていたり、力を持っていることを自覚していなかったり、持っているのに隠したりする。また、多くの人が組織内で力を手に入れようと躍起になっていることもある。

あるいは、力が欲しいが、それを周りに知られるとまずいことになるため、その欲を出すまいとする人もいる。

いずれにせよその力が一体どこから、どのようにやってくるのか周りからは判然としない。力を持つ人だけが、その秘密を知っていることになる。力は、組織における究極のタブーである。

 

力とは

力とは、Aという人物が別のBという人物の行動に影響を与え、AがそうさせなければBがしなかったはずのことを、Bにさせる能力を言う。

力には、次の3つの特徴がある。

①力は、表面にあらわれる能力でもあり、潜在的に発揮される能力でもある

影響の与え方は、明らかなものとは限らない。無言の圧力をかけたり、遠回しのメッセージを発したりすることもある。

したがって、力を持っていても行使しないこともあるし、付与された力を行使する能力がない場合もある。

②力は依存と相関関係にある

また、影響を受けるBはAに何らかの形で依存していることが前提となる。

そうでなければ、Aの影響を受ける必要はないからである。他者への依存度が高くなるほど、影響を受ける。

たとえば、AがBの望む何かを支配しているときには高い依存関係が生じる。

行使される側に選択の裁量権がある

さらに、Bには意思決定権があることも重要である。Bは、Aがさせようとしていることをしないという選択もできる。しかし、BはAが望む行動に移る。このとき、AがBに力を行使したと言える。

もしBの仕事上の行動が、職務記述書や組織ルール、規則、法律や基準などによって決められていて、Bに何の選択する余地もなければ、AはBに対して力を発揮することはできない。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。