【キーワード】顧客志向文化

顧客のロイヤルティ(ファン、リピーターの獲得)や長期的な収益につながる具体的な案として、顧客志向文化の構築が挙げられる。

顧客志向文化を構築し、強力な顧客基盤を固めることで、収益成長率や財務業績において競合他社を引き離すことができる。

なぜなら、多くの企業では階層や指示命令系統が基盤となっており、メンバーがトップや上司の顔色をうかがいながら仕事を進めるという、内向的な文化の方が普通だからである。つまり、組織内における顧客へのサービス精神育成が差別化につながる、ということである。

組織メンバーの関心や注意が内向きになればなるほど、外部である顧客に対するベクトルが弱まり、顧客喪失や競合との敗北につながる可能性が高い。

組織が競争を生き残るためにも、全体のベクトルを可能な限りにおいて、外に向けるような仕組みと、それを促すような組織文化の構築が求められる。

 

顧客志向文化を構築するための6条件

顧客志向文化を構築するには、次の6つの条件が関係する。

① メンバーのタイプ
性格が社交的で親しみやすいメンバーを採用しているかどうか。

② ルール化・マニュアル化の程度
サービス担当者には、さまざまな顧客に対するサービス要件に対応するための裁量権を与え、それを満たすために制約を取り去っているかどうか。

厳格な規則、手続き、ルールがあると、顧客志向のサービスの提供が困難となる。

③ 権限委譲
顧客のサービス担当者に、顧客満足につながる行動に必要な意思決定を下せるような権利が与えられているかどうか。

④ 傾聴スキル
サービス担当者が、顧客の発信するメッセージに耳を傾け理解する能力を有するかどうか。

⑤ 役割の明確化
サービス担当者が、組織と顧客の間で橋渡しの役割を担っているかどうか。

組織内の上司やトップと、顧客双方の要求に応える必要があり、役割のあいまいさや対立が高まると職務満足感が低下し、業績も損なわれかねない。

顧客志向文化がうまく機能すれば、最良の仕事の方法(ベストプラクティス)や重要な業務にかかわる不確実性は減少する。

⑥組織が効果的になるために役立つ行動を取る
顧客志向文化のメンバーは、心から顧客を満足させたいと考えており、顧客のニーズを満たすためには、通常の業務範囲を超えた行動も積極的に取ろうとするかどうか。

その行動は、マニュアルや職務記述書には細かく書いておらず、公式化されていない。

 

顧客志向文化構築のための6つの施策

以上の要素を踏まえて、顧客志向文化の構築のために次のような対策が考えられる。

① 選抜採用
サービス志向の強い性格や姿勢を持ったサービス担当者を採用することが出発点となる。

親しみやすさ、熱意、気配りのあるサービス担当者は、サービスの質に対する顧客の感じ方に良い影響を与える。

② 研修と社会化
すべての組織が①のようなメンバーを新たに採用できるとは限らない。

したがって、採用よりも研修や参加プログラムに重点を置き、商品・サービス知識の向上、傾聴スキル、忍耐、感情の表現に焦点を当てる。

③ 権限委譲(エンパワーメント)
ルール化やマニュアル化の程度を低くし、メンバーに対して業務に関する日常の意思決定を行う裁量権を委譲する。

④ リーダーシップ
顧客志向文化におけるすぐれたリーダーは、顧客中心のビジョンを伝え、顧客のために全力を尽くすという姿勢を常に示すことで職務を果たしている。

メンバーに対して、そのようなリーダーシップ開発に努めることも有効となる。

⑤ 業績評価
結果の数字ではなく、努力、コミットメント、チームワーク、問題解決などのサービスの質が向上する行動を評価する。

⑥ 報酬システム
顧客満足につながる目立った取り組みを認め、非常に優れた顧客サービスを昇給・昇進・報酬の条件とする。

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【キーワード】組織文化の学習

メンバーはどのように組織文化を学ぶか

組織に参加したメンバーは、研修やOJT以外の場でどのように組織文化に触れて、それを受け入れるだろうか。

組織文化の特徴が表れるものとして、次の4つが挙げられる。

伝説

多くの組織で、伝説的な話や誰もが知っている話というものがあります。

そのようなエピソードには多くの場合、創立者についての話や型破りな決断・対応、誰もが笑える話、貧乏から金持ちへと成功した話(売上や給料が上がっていった話)、人々の記憶に残る経営決定、労働力の減少(リストラや大量離職)、メンバーの配置替え、過去のミスに対する反応や組織の対応が含まれます。

また、エピソードは過去と現在をつなぎ、現在の行動についての説明を正当なものにしようとします(「昔、こういうことがあったから・・・」)。

多くの伝説的エピソードは、創業者や偉大な社員の人柄を知るきっかけともなるし、危機に面した時の有効な考え方、行動の説明をしている。メンバーはそこから組織の価値を知ることができる。

 

行事・儀式

恒例行事や記念となる儀式は、組織の基本的価値観を表現・強化するもので、どのような目標が最も重要か、そしてどのようなことは犠牲にしてもよいのかを示す。

たとえば、朝礼で特定の掛け声や社歌を全員で唱和したり、優れた業績を残したとされるメンバーを表彰したり、社内運動会や経営発表会など年に一度の恒例行事を催すことで、社内の結束を強化し(かえって弱まるパターンもあるが…)、メンバーの士気を高める手段として使われる。

 

物・シンボル

会社によって、経営幹部には運転手つきのリムジンが提供される(米では自家用ジェット機の使用なども)。リムジンでなくとも、会社負担によって車が提供されたり、ファーストクラスでの航空機利用が許されたりする場合もある。

会社によっては、役員室などは閉鎖された空間がほとんどなく、基本的に、間仕切りで小さく区切った仕事スペース、共有エリア、会議室で構成されているところもある。

そのような飾らない会社のあり方は、メンバーに対して同社が開放性、平等、創造性、柔軟性に価値を置く会社であることを示している。

本社のレイアウトや経営幹部に提供される物は、物的シンボルの一例で、オフィスのサイズや凝った家具類、重役手当、服装、骨とう品や絵画を置くなども含まれる。

これらの物的シンボルは、組織メンバーに対して、重要な立場にあるのは誰か、経営陣はどの程度の平等を求めているのか、誰に対してどのような行動が適切かを示している。

言語(専門用語)

多くの組織では、仲間うちだけで通じる言語(企業用語・業界用語)を用いる。

これにより、同じ文化またはサブカルチャーのメンバーとして確認される。メンバーは組織内で通用する言語を学ぶことで、文化を受け入れていることを証明し、それによって文化の保存に貢献する。

また、組織は、業務に使用する機械、人、取引先、顧客、商品やサービスを表現するための専門用語をつくる。新メンバーや外部の人は、それらの略語や意味不明な用語に戸惑うこともあるが、しばらくすると慣れてしまって、いつの間にか自分で使うようになる。

専門用語が自分の一部になると、文化やサブカルチャーのメンバーをつなぐ共通言語として作用する。

そうした組織文化の受容と体現が、文化の学習と継承につながっており、組織の一員であることをより実感することになる。つまり、「染まる」ということである。

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【キーワード】組織文化の誕生

組織文化の始まり

「業務開始前には掃除をする」

「顧客への対応は迅速第一」

「朝礼はとにかく元気よく」

「社歌は肩を組んで歌う」

組織に入ったとき、既存メンバーは習慣や伝統、物事の進め方を細部にわたって、言われるまでもなく行っている。

なぜそのようなやり方をしているのか?

それは、これまでに行われてきた方法のうち、成功の度合いが高いものを選ばれている。

そして、どれほど成功したかどうかは、ある人物によって決められる。すなわち、創業者である。

創業者、あるいは、実質的な力を持つ人物が決めたルールや行事、ほめたやり方、評価したことがら、逆に、怒りを買ったことなどは、組織メンバーの考え方や行動に大きな影響を与える。

本来的に、創業者は組織がどうなるべきかというビジョンを持ち、物事のやり方について前例に縛られることがない。創業者の発言や行動、決断そのものが前例となる。

規模が小さく新しい組織であれば、メンバーの全員に創業者の価値観やビジョンが強い影響力を持って、それが文化として定着する。

創業者はオリジナルな考えを持ち、その考えをどう実施するかについて特定の考えを持っている。そのような中で、最初のメンバーたちが創業者とのやり取りの中で経験的に学び、繰り返し行われて維持されるものが、組織文化としての始まりである。

たとえば、国際的な自動車メーカーの本田技研工業株式会社は、創業者の本田宗一郎の価値観や考え方がいまも残っているとされる。このような有名企業に限らず、様々な企業を見渡せば、創業者が源となる文化が諸所に見て取れる。

 

組織文化の誕生プロセス

最初の組織文化は創業者の理念や哲学から生まれ、次に採用の基準(どんな人物を組織メンバーに加えるか)に強く影響を与える。

そして、現在の経営陣は、受け入れられる行動や受け入れられない行動について、特定の「空気」をつくることになる。

もちろん、創業者から経営を受け継いだ次のトップも、組織文化に影響を与えるが、先代から続いたものをいかに取捨選択し、新たな文化を生み出すかについては大きな課題となる。

組織メンバーがどのように組織文化を受け入れていくは、次のことに影響される。

  1.  採用プロセスで、組織の価値観と新メンバーの価値観をマッチさせることがどれくらい成功するか
  2.  経営陣がどのような社会化(文化への適応を促すこと)の方法を好むか

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強い文化を浸透させ、組織メンバーをコアとなる価値観のもとに動かしていき、マネジメントしようと思うためには、組織文化とマッチする人物の採用から始めることになる。

トップから直接影響を受けやすい経営陣のあり方と、メンバーを組織文化になじませる社会化の仕組みについて、そのプロセスを客観的に観察・分析することで、トップや経営陣は組織文化がどのようなメカニズムとして機能しているか、理解することができる。

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【キーワード】組織文化の機能

組織文化は何のためにあるのか

A社で活躍している人が、同業他社のB社でも同じように活躍できるだろうか。

業界全体の共通した雰囲気はあるものの、それぞれの企業には独自の組織文化があり、文化によって「その会社らしさ」が表れる。

組織ではたらく個人にとって、はたらく先との「相性」は重要な問題である。

自律的に仕事ができる人が、細かいことにまで管理しなければ気が済まないような、マイクロマネジメント型の上司やトップがいる企業で活躍できるだろうか。そのような人は、プロセスにあまり口を出さずに比較的に結果重視であるような組織文化をもつ企業の方が、水を得た魚のようにはたらけるのかもしれない。

つまり、組織文化とは、組織ではたらく人との相性を図るひとつの基準であると言える。

待遇がどれほど良かったとしても、評価が公平であったとしても、仕事の進め方や評価基準、顧客への姿勢、マネジメントのスタイルについて価値観や考え方が合わなければ、はたらくメンバーは離職してしまう可能性がある。

そのような組織文化の機能は、次の5つにまとめられる。

1. 自他を区別する

A社にはA社の、B社にはB社の独自の文化がある。同じ人がいないように、同じ会社などない。

電話の取り方、あいさつの仕方など細かいところをひとつ取ってみても、異なる場合がある。その根幹となるのが組織文化であり、組織文化こそが自社を自社たらしめているものである。

 

2. 個人のアイデンティティ(帰属意識)を育む

株式の所有とは別にして、メンバーが自分が所属する組織を「自分の組織だ」と思える場面がある。このようなとき、メンバーは組織に対してアイデンティティを感じている。

かたや、「私は○○社の社員である」ということに誇りやプライドを持つ人がいる。

社員が自分と会社をほとんど同一化させてしまい、「会社の考え=自分の考え」と錯覚してしまう人もいる。このような強いアイデンティティを生むのも、組織文化の機能である。

逆に、組織文化が弱い会社ほど、メンバーはアイデンティティを持ちにくくなる。

 

3. 個人の枠を超えたコミットメントを生む

優れた組織文化の下では、メンバーが個人の興味や関心の範囲を超えて会社の目的やゴールを目指すことに貢献しようとする。

自分だけのことを考えるのではなく、所属する部署や組織そのものへの関与を深めることを促すのである。

 

4. 組織システムを安定化させる

ここでいうシステムはIT技術によるシステムではなく、組織メンバーがどのような言動を行うかについての基準を指す。

細かいことを言わずとも、メンバーはその基準にしたがって自律的に活動を行い、組織の一致団結に寄与する。

 

5. 組織内のゲーム・ルールを定める

就業規則やマニュアルとは異なり、組織文化はルールを定めている。いわば、組織内でいかに生きるかの「サバイバル・ゲーム」のルールなのである。

どのような組織でも、明確には言われていないが、コアとなる大前提や「これは知っておけ」という類の知識、「××はしてはいけない」という暗黙のルールが存在する。

そのルールに従ってメンバーは毎日のように行動や発言をしている。

新しく組織に入った新人にとっては、そのルールを学び、繰り返し実践できるようになるまでは半人前でしかない。それは高い地位であろうが、現場のスタッフであろうが、関係はない。

その組織で認められ、評価を受け、昇進・昇給を狙うためにはそのルールにしたがうことが大前提であり、ルールから外れることは「サバイバル・ゲーム」からの脱落を意味する。

誰かがつくった組織の中ではたらき、活躍しようと思うならば、組織文化への理解を深め、自社の文化をメタの観点から観察、分析し、自らの言動に活かす必要がある。

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【キーワード】強い組織文化

強い組織文化

組織文化には強弱の程度がある。

その強弱は、次の2つのポイントによって決まる。

①文化の影響力
組織が持つコアとなる価値観が、ひとつの組織文化としてメンバーに対してどの程度の影響力を持っているか

②文化の共有範囲
コアとなる価値観を受け入れ、共有しているメンバーの数

たとえば、ある企業が「顧客への情報開示は積極的に行い、オープンにすることが望ましい」という価値観を掲げているとする。

上記の2つのポイントを基準に考えると

①文化の影響力
従業員が、実際に顧客に対して良い・悪い情報にかかわらずどの程度の頻度で顧客に対してオープンな行動を取っているか

②文化の共有範囲
オープンな行動をしている従業員がどれくらいの人数いるか

このように、行動の頻度と人数に比例して組織文化の強弱は測ることができ、組織マネジメントにおいて経営陣が掲げている価値観が有効かどうかを把握する手がかりとなる。

 

強い文化は離職を防ぐ

組織が強い文化を持つと、メンバーが行動や思考の拠りどころとする基盤が築かれることになり、そうした基盤の上にメンバーは一致団結し、組織に対して忠誠心を示したり、組織への関与を高めたりする。

明確で広く共有されている組織文化に従って行動することで、メンバーは確実に成果を挙げ、賞賛や評価を受けられる可能性が高くなる。

成果が挙がり、生産性が高まって「今日はいい仕事ができた」と思えると、職務への満足度が上がる。さらに周囲からの信頼や評価が高まると仕事がおもしろく感じられ、離職率は下がると考えられる。そして、組織文化に対するコミットメントがさらに強まり、好循環を生む。

もちろん、職場環境や待遇面の影響もあるだろうが、組織文化の強さという側面からメンバーの忠誠心や会社愛を見ることも可能である。

 

弱い文化

逆に、組織において拠りどころとなる価値観が、あいまいであったり、不明確であったりすると組織文化は弱くなる。

たとえば、経営理念として「顧客のために」という言葉を掲げていても、実際は社長や上役の顔色をうかがって社内にベクトルを向けなければならない雰囲気があれば、一貫性を欠いており、もはや経営理念が立派に書かれたものは紙くず以下の存在でしかない。

弱い文化が組織内にはびこると、離職が起こる可能性が高くなる。

なぜなら、掲げている理念や繰り返される言葉に対して、現実に求められるものがずれていれば、メンバーは行動の指針を失い、評価も不明確になってモチベーションが下がるからである。

強い文化は、ある種宗教的に強い存在力と影響力を持ち、メンバーの行動・思考様式を規定している。そのため、変化に対しては抵抗を示すが、弱い文化であれば変革や改革のチャンスが潜んでいる(上役の顔色を伺って「ノー」と言わないことが良い価値観とされ、それが暗黙のうちに広く共有されていれば、それはそれでひとつの強い文化となっており、変化は難しい)。

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