【キーワード】組織への依存

組織に対する依存

組織で働く対価として給料や賞与を得ている場合、個人は組織に対して経済的に依存する関係が生じる。

もちろん経済的対価だけでなく、感謝や評価、称賛、ほめる、やりがいの提供などソフトな報酬をも組織は個人に与えることにより、内面的に生活を充実させる。

また、働いている企業や団体が社会的に知名度が高くブランド力がある場合は、個人は組織とのアイデンティティの同一化を行い、所属していることそのものが魅力となって個人にプライドを与える。

結果として、「給料がなくなれば生活できない」「多少の不満はあるものの今の仕事に代わるものはない」「自分は〇〇社の社員であることが誇りだ」など、個人は組織に対して心理的に依存することになる。

この依存関係を解消することは容易ではない。また、気づいていたとしてもどうすることもできないパターンが多い。なぜなら、希少性、重要性、非代替性のすべてを組織が兼ね備えているからだ。個人がひとつの組織で長く働き続けることは、これら3要素の色合いを濃くすることになる。さらに、組織への愛着を個人が持つに至れば、なおさら個人は組織を離れられなくなる。

逆に言えば、組織がその3要素を充実化できていなければメンバーは簡単に離脱してしまうだろう。組織に対する愛着がなければ、決断はさらに速くなる。

したがって、依存関係は絶妙なバランスを取っている必要がある。組織側に力がありすぎて個人が組織から離れづらい状態であると、行き過ぎればパワハラやセクハラの横行、過労の強制、嫌がらせやいじめ、罵声を浴びせるといった個人の内面を踏みにじる行為に発展しかねない。こうしたモラルハラスメントは個人レベルで起きるものではあるが、それを許す環境は組織がつくりだしている。

逆に個人が力を持ちすぎていれば、転職率の高さやルールの逸脱、権力の濫用、会社の信用を落とす行為などにつながりかねない。このような現象をすべて個人の問題だと片付けるわけにはいかない。火のない所に煙は立たないからだ。

組織に所属するのであれば、どのような種類の依存関係があり、バランスの状態はどうなっているかについて常に気を配っておく必要がある。また、マネジメントレベルから見れば、どの部署や人間関係に依存関係がどのように生じているかを注意深く見ておく必要がある。

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【キーワード】依存

組織内で力を発揮するには、依存がカギとなる。なぜなら、依存は偏った力関係を生むからだ。対上司、対組織、対取引先などあらゆる場面において依存関係を生み出すことは、業務を望みどおりに進めたり、交渉を有利に進めたりすることができる。

では、依存はどのような場合に生じるのだろうか?

一般的に、Bの必要とするものをAだけが支配している場合、BをAに大きく依存させることができ、圧倒的な力を得られる。しかし、もしBの必要とするものをCやDも持っている場合、Aは力をそこまで大きくすることはできない。

つまり、依存は代替的な供給源の多さと反比例する。誰もがスーパープレイヤーであればうまくプレーできることに利点はないし、お金持ち同士ではお金が力にならない。

依存を生むもの

それでは、何が依存を生むのか具体的に見てみよう。

① 重要性

Aが支配しているものを誰も欲しがらなければ、Aは誰に対しても力を持つことはできない。

依存を生むには、相手から重要と見なされるものを支配しなければならない。組織は不確実性を避けようとする傾向にあり、その不確実性を吸収できるような個人や集団は、組織において重要な資源を支配している。

たとえば、製品・サービスが売れるかどうかは企業にとって致命的な不確実性であるため、マーケティング部門が最大の力を持つ可能性がある。化粧品や健康食品ではマーケティング部門が最も強力とされる傾向にある。

一方で、自動車メーカーや電気機器メーカーなど技術志向の組織では、製品の品質を維持するためにエンジニア集団が組織内で影響力を持ったり、労働争議では労務交渉者や人事部門が大きな力を持ったりする。

② 希少性

他にないもの、なかなか手に入らないものを支配しなければ依存は生まれない。力を得るには、その資源が希少性の高いものと見なされる必要がある。

組織においては、序列の低いメンバーが、序列の高いメンバーに対して力を持つケースがある。たとえば、上司や先輩が、仕事で重要と考える知識や情報を入手しなければならないときに当てはまる。

また、序列の低いメンバーが、自分の存在の希少性を高めるために一見不合理と見える行動を取る。たとえば、マニュアルから離れて自分流のやり方で実施したり、他人に仕事を教えなかったり、自分の仕事の内容を囲い込んだり、自分たちにしかわからない専門用語を使ったり、周りから何が行われているかわからないよう秘密裏に業務を行ったりする場合などである。

③非代替性

ある資源のうち、他に替わるものがないものを支配すると力が増大することになる。

たとえば、原油の採掘資源を支配していた国は、これまで代替エネルギーがなかった(あってもコストパフォーマンスが悪かった)ために、石油資源を持たない国に対して力を発揮できた。しかし、シェールガスや水素、太陽光など様々な代替選択肢が増えたことから非代替性が失われ、影響力を低下させたと考えられる。

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【キーワード】力の源泉(私的な力)

力は、公式の地位や権限から生まれるとはかぎらない。

組織においては、そのような形式的なものに頼らずに力を発揮できる人物が必ずいる。そのタイプの人物は、私的な力を持っていると言える。

公式の力を手に入れる可能性がところ低いが組織で力を発揮したいと考える場合や、公式権力を手に入れたとしても名実ともに備わったリーダーを目指したいと思う人には、次の3つの力が参考になるだろう。

① 専門力

専門力とは、専門技術や特殊なスキル、知識を持つ結果として行使される影響力を指す。世界的にも、日本国内においても技術志向が高まるにつれて、専門技術は最も強力な影響力の源となっている。

また、仕事が専門化するにつれて人々は目標達成のために「専門家」に依存するようになった。大半の人が医師の助言に従うことは、医師が専門技術を持つことで力を行使しているし、IT専門家、税理士、弁護士、産業カウンセラー、その他の専門家なども専門知識によって影響力を持つことができる。

そして、そのような資格が専門力を表すパターンだけではなく、組織においては周囲から認められることで発揮できる専門力もある。すなわち、ある個人特有のスキルであったり、考え方、情報と知識をかけあわせて発信できる能力などが当てはまる。

ともすれば、仕事や知識を囲い込んでいるとも思われかねないが、「〇〇のことはあの人に聞けばいい」と言われるくらいまで自分の知識や能力を磨くことは非常に重要と考えられる。

② 同一化による力

AがBにとって好ましい資質や個性を持つ場合、BはAと自分を同一化させる(同じようになりたいと思う、あるいはモデルとする)。この場合、BがAを高く評価してAを喜ばせたいと思うため、AはBに対して力を行使することができる。

同一化による力は、他人への賞賛やその人のようになりたいと思う欲求から生じる。野球少年たちはイチローが使っているメーカー製品を同じように使いたいと思うだろうし、人気モデルや歌手のファッションを真似するなど、同一化による力がいつの間にか行使されている例は枚挙にいとまがない。

同一化による力を発揮するには、組織においてある程度の存在感を持つ必要がある。したがって、これは一朝一夕で身につけられるものではないだろう。

③ カリスマ性

カリスマ的リーダーは、部下を追従させるための力を持っている。

魅力的なビジョンを明確に表現できる、個人的リスクを取る、環境やフォロワーに対する配慮を示す、型破りな行動を取る意欲などが当てはまる。

しかし、多くの企業には公式のリーダーとしての地位はなくても、カリスマ的な資質を持ち、それを強みとして他人に影響を与えている人もいる。

カリスマ性は、持って生まれた資質やパーソナリティ(性格)、教育訓練、自己研鑽など様々な要素を含むため意図的にこういった力を持つことは難しいかもしれない。

したがって、私的な力を持つための第一歩は、やはり学習や積極的な経験獲得などの「自分を磨くこと」から始まるのではないだろうか。

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【キーワード】業績評価面談

評価面談が気まずい場合

評価面談は、評価者がメンバーに対して業績評価の結果を伝える、ひとつのコミュニケーションの機会である(考課面談とも呼ばれる)。

評価される者の内容がプラスで、さらに昇進や給与・賞与に反映されるパターンは、評価者にとっても非常にやりやすい。

しかし、評価がマイナスの場合や苦手とする相手に対する面談は、上司にとって気まずいものでしかない。

そもそも、その評価をしたのは自分である場合が多かったり、努力はしたものの全体の調整やオーナーの一存でマイナスに転じるケースもあったり、結局嫌われる役になってしまい、説明も難しい。

評価者にとっては複数のうちのひとつの評価であっても、あるメンバーの評価はその人にとってただひとつの評価であるから、余計に複雑である。

 

自己防衛

評価者自身が、保身や部下との対立を恐れるあまり、一歩踏み込まずになんとなく面談をしてしまったり、重要なポイントを伝えずに済ませてしまうと、評価をされた側の不信感がさらに募ってしまい、今後の人間関係にもマイナスの影響を与えかねない。

また、もし相手のマイナスのポイントや改善点を伝えられたとしても、「自分はそんなことない、一生懸命やっている」「○○さんはどうなんですか、自分だけが言われるのは納得できない」などと自己防衛に陥る可能性が高い。

元々給与が低かったり、休日条件などの待遇が悪かったりすると、「だいたいこの会社は…」など、メンバーが自分を改善するどころか非難の矛先を上司や組織に向ける結果になってしまうこともある。

 

自己評価>周りの評価

あるメンバーの評価が、組織全体の位置づけからすると平均よりやや下であったとしても、そのメンバーは「私は下から数えるよりも上位から数えた方が速いところにいる」と考える可能性が高い。

また、厄介なことにプラスの評価であっても「それでは足りない」と考える人もいる。

 

対策を考えるための3つの前提条件

以上のことに対応するためには、前提として3つの条件を整えておく必要がある。

1.評価制度が公平である

評価される側が、評価制度そのものに不信感を抱いている場合は、いくら言葉を尽くしても納得は得られがたい。評価する側とされる側の間だけでなく、プラス評価をされたメンバーとマイナス評価をされたメンバーの関係も悪くなる可能性があるだろう。

評価の仕組みと方法が透明であり説明が十分になされていることや、適正に手続きがされていると感じられることが大きな前提となる。

2.面談者が誠実である

面談者が不誠実で、好き嫌いや保身で面談の質を下げたり、一方的な非難や愚痴の場になれば、面談を受ける側はさらにストレスとなる。これでは、制度のバランスを損なう結果しかない

面談者に対しては、メンバーにが面談を生産的で有意義な場であると感じてもらうように研修や訓練を行うことで、一定の質が保たれることにつながる。

研修では、面談を単なる一方的な評価の場とするのではなくて、評価結果をきっかけとして次をどのようにするか、支援的な立場で接するにはどのようにするかといった内容が望ましい。

3.評価面談以外のコミュニケーションの機会がある

顔も合わせたことがない上司や自分の仕事を知らない相手から評価を受ければ、メンバーは評価に不満を持つ。

また、忙しいため「どうせ面談があるから」と日々のコミュニケーションをおろそかにしていれば、面談をうまく軌道に乗せるのに時間がかかったり、肝心なことが伝えられずに終わる場合もある。

普段から上司が部下の仕事を支援するつもりで、どういった行動が望ましいか、どのような仕事の進め方を心がければよいかなどを普段から心がけていれば、メンバーとしても評価への納得の程度は高まりやすい。

 

評価制度をなくす

業界の状況や会社の個別的な事情、制度の欠陥により、評価制度が機能していない場合もある。評価の目的が昇給や昇進につながるとしながらも、実際には見込みがまったくないパターンがそれに当たる。

また、実際の昇給は年次や序列で決まっていて大きな変化がなく、昇進も評価制度には関係のない項目で決められる場合(昇進試験の結果など)、何のための評価なのかを見直す必要があるだろう。

評価をする側も、される側も「意味がない」と思って無為に時間を過ごすよりは、ほかの生産的なことに時間を使うか、評価制度を組織の活性化の機会としてとらえ直してまったく異なる制度を構築した方が組織にとって有益だろう。

組織の規模にもよるだろうが、評価制度そのものをなくしてしまい、日々のコミュニケーションを充実させることにつなげたり、昇給や昇進のあり方をもっとシンプルな方式にする機会をつくることが、良い方向に進むきっかけとなるかもしれない。

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【キーワード】キャリア・アプローチ

キャリアのリスクとアプローチ

かつての日本では、リスクを好まない大多数の人々によって会社が支えられ、会社による恩恵を受けることで個人は自分の生活や家族を支えていた。

これは入社から定年まで会社が応え続けるという前提に裏打ちされて成り立っていたものである。そのような会社では、個人はその組織において有効な知識や技能を身につけ、それに磨きをかければよかった。

しかし、その組織で磨かれたスキルは必ずしも他の企業で求められるものとは限らず、かつて企業と個人の関係を支えていた前提が、ほとんどの企業で崩れた現在の状況では、むしろ特定の組織内でのみ有用なスキルを身につけて組織外で通用するスキルや知識の習得に熱心でないまま働き続けることが、個人の将来キャリア上大きなリスクを伴うことになる。

この状況について、会社の責任にすることも容易だが、それを叫んだところで何も変わらない。前向きな視点に変えて、様々な選択肢の中から個人が自らのキャリアを選び取って、自分の生き方に責任を持つ時代になったと考える方がより生産的だろう。

このような状況を打破する裏技はない。地味ではあるが、組織と個人ができる具体的なアプローチを以下に、個人と組織の別で掲げる。

個 人
1. 己を知る
自分の長所と短所を理解する。PRできる能力・スキルは何かを正直に明らかにする。一人で客観的に行うのは難しいため、組織外の人にキャリア相談すると進みやすい。
2. 自分の評判を把握する
自慢にならないように、自分の業績や功績を組織内外の人にPRしてみる。できればフィードバックをもらう。
3. 人脈を構築・維持する
地元、専門職、交流会、セミナーなど組織外での人脈づくりに努めること。
特に、「社外」でのコミュニティを意識することが重要。
4. 最新の技術を身につける
需要の高い特定のスキルを身につける。他の組織では即戦力とならないような、ある組織でのみ通用するスキルの習得は避ける。
5. スペシャリストとしての能力とゼネラリストとしての能力をバランスよく身につける
専門分野だけでなく、変化する職場環境に多面的に対応できるように他分野の能力も養う。
6. 自分の功績を記録する
やりがいを高め、自分の能力を客観的に証明できる仕事や業績を記録しておく。定期的に仕事の棚卸をするとよい。
7. 選択肢を広げておく
最善を望み、最悪に備える。いつ何が起きても大丈夫なようにすること。
「会社がつぶれても生きていける」状態をつくりだす。
組 織
1. 組織の目標や将来的な戦略を明確に伝える
メンバーが組織の方向性を理解すれば、そうした将来像に合わせて個人的な計画を策定することができる。
2. 成長機会をつくり出す
社員に、新しく興味深く、かつ専門的にやりがいのある業務経験の機会を提供すること。
3. 財政支援を提供する
最新のスキルや知識を身につけるための支援策として、奨学金制度または支援金制度を設ける。
4. メンバーが学ぶ時間をつくり出す
有給で職場外研修に参加させる。また、仕事の負荷を軽減させ、従業員が新しいスキル、能力、知識を身につけるための時間的余裕を持てるよう配慮する。
5. キャリアセンター等の支援の場をつくる
社員のキャリア上、役に立つ最新の情報を提供したり、相談に応じてキャリア開発を支援したり、定期的なセミナーを実施するような交流の場をつくる。

基本的に、組織ができることはメンバーを自立させ、継続的にスキルや知識の習得を促すことで社員が自分の市場価値を維持する手助けをすることである。

一方で、個人ができることは自分を個人事業主のように考え、自分自身でキャリアを管理し、伸ばしていくという責任を持たなければならない。

 

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