【キーワード】組織文化の機能

組織文化は何のためにあるのか

A社で活躍している人が、同業他社のB社でも同じように活躍できるだろうか。

業界全体の共通した雰囲気はあるものの、それぞれの企業には独自の組織文化があり、文化によって「その会社らしさ」が表れる。

組織ではたらく個人にとって、はたらく先との「相性」は重要な問題である。

自律的に仕事ができる人が、細かいことにまで管理しなければ気が済まないような、マイクロマネジメント型の上司やトップがいる企業で活躍できるだろうか。そのような人は、プロセスにあまり口を出さずに比較的に結果重視であるような組織文化をもつ企業の方が、水を得た魚のようにはたらけるのかもしれない。

つまり、組織文化とは、組織ではたらく人との相性を図るひとつの基準であると言える。

待遇がどれほど良かったとしても、評価が公平であったとしても、仕事の進め方や評価基準、顧客への姿勢、マネジメントのスタイルについて価値観や考え方が合わなければ、はたらくメンバーは離職してしまう可能性がある。

そのような組織文化の機能は、次の5つにまとめられる。

1. 自他を区別する

A社にはA社の、B社にはB社の独自の文化がある。同じ人がいないように、同じ会社などない。

電話の取り方、あいさつの仕方など細かいところをひとつ取ってみても、異なる場合がある。その根幹となるのが組織文化であり、組織文化こそが自社を自社たらしめているものである。

 

2. 個人のアイデンティティ(帰属意識)を育む

株式の所有とは別にして、メンバーが自分が所属する組織を「自分の組織だ」と思える場面がある。このようなとき、メンバーは組織に対してアイデンティティを感じている。

かたや、「私は○○社の社員である」ということに誇りやプライドを持つ人がいる。

社員が自分と会社をほとんど同一化させてしまい、「会社の考え=自分の考え」と錯覚してしまう人もいる。このような強いアイデンティティを生むのも、組織文化の機能である。

逆に、組織文化が弱い会社ほど、メンバーはアイデンティティを持ちにくくなる。

 

3. 個人の枠を超えたコミットメントを生む

優れた組織文化の下では、メンバーが個人の興味や関心の範囲を超えて会社の目的やゴールを目指すことに貢献しようとする。

自分だけのことを考えるのではなく、所属する部署や組織そのものへの関与を深めることを促すのである。

 

4. 組織システムを安定化させる

ここでいうシステムはIT技術によるシステムではなく、組織メンバーがどのような言動を行うかについての基準を指す。

細かいことを言わずとも、メンバーはその基準にしたがって自律的に活動を行い、組織の一致団結に寄与する。

 

5. 組織内のゲーム・ルールを定める

就業規則やマニュアルとは異なり、組織文化はルールを定めている。いわば、組織内でいかに生きるかの「サバイバル・ゲーム」のルールなのである。

どのような組織でも、明確には言われていないが、コアとなる大前提や「これは知っておけ」という類の知識、「××はしてはいけない」という暗黙のルールが存在する。

そのルールに従ってメンバーは毎日のように行動や発言をしている。

新しく組織に入った新人にとっては、そのルールを学び、繰り返し実践できるようになるまでは半人前でしかない。それは高い地位であろうが、現場のスタッフであろうが、関係はない。

その組織で認められ、評価を受け、昇進・昇給を狙うためにはそのルールにしたがうことが大前提であり、ルールから外れることは「サバイバル・ゲーム」からの脱落を意味する。

誰かがつくった組織の中ではたらき、活躍しようと思うならば、組織文化への理解を深め、自社の文化をメタの観点から観察、分析し、自らの言動に活かす必要がある。

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