メンバーはどのように組織文化を学ぶか
組織に参加したメンバーは、研修やOJT以外の場でどのように組織文化に触れて、それを受け入れるだろうか。
組織文化の特徴が表れるものとして、次の4つが挙げられる。
伝説
多くの組織で、伝説的な話や誰もが知っている話というものがあります。
そのようなエピソードには多くの場合、創立者についての話や型破りな決断・対応、誰もが笑える話、貧乏から金持ちへと成功した話(売上や給料が上がっていった話)、人々の記憶に残る経営決定、労働力の減少(リストラや大量離職)、メンバーの配置替え、過去のミスに対する反応や組織の対応が含まれます。
また、エピソードは過去と現在をつなぎ、現在の行動についての説明を正当なものにしようとします(「昔、こういうことがあったから・・・」)。
多くの伝説的エピソードは、創業者や偉大な社員の人柄を知るきっかけともなるし、危機に面した時の有効な考え方、行動の説明をしている。メンバーはそこから組織の価値を知ることができる。
行事・儀式
恒例行事や記念となる儀式は、組織の基本的価値観を表現・強化するもので、どのような目標が最も重要か、そしてどのようなことは犠牲にしてもよいのかを示す。
たとえば、朝礼で特定の掛け声や社歌を全員で唱和したり、優れた業績を残したとされるメンバーを表彰したり、社内運動会や経営発表会など年に一度の恒例行事を催すことで、社内の結束を強化し(かえって弱まるパターンもあるが…)、メンバーの士気を高める手段として使われる。
物・シンボル
会社によって、経営幹部には運転手つきのリムジンが提供される(米では自家用ジェット機の使用なども)。リムジンでなくとも、会社負担によって車が提供されたり、ファーストクラスでの航空機利用が許されたりする場合もある。
会社によっては、役員室などは閉鎖された空間がほとんどなく、基本的に、間仕切りで小さく区切った仕事スペース、共有エリア、会議室で構成されているところもある。
そのような飾らない会社のあり方は、メンバーに対して同社が開放性、平等、創造性、柔軟性に価値を置く会社であることを示している。
本社のレイアウトや経営幹部に提供される物は、物的シンボルの一例で、オフィスのサイズや凝った家具類、重役手当、服装、骨とう品や絵画を置くなども含まれる。
これらの物的シンボルは、組織メンバーに対して、重要な立場にあるのは誰か、経営陣はどの程度の平等を求めているのか、誰に対してどのような行動が適切かを示している。
言語(専門用語)
多くの組織では、仲間うちだけで通じる言語(企業用語・業界用語)を用いる。
これにより、同じ文化またはサブカルチャーのメンバーとして確認される。メンバーは組織内で通用する言語を学ぶことで、文化を受け入れていることを証明し、それによって文化の保存に貢献する。
また、組織は、業務に使用する機械、人、取引先、顧客、商品やサービスを表現するための専門用語をつくる。新メンバーや外部の人は、それらの略語や意味不明な用語に戸惑うこともあるが、しばらくすると慣れてしまって、いつの間にか自分で使うようになる。
専門用語が自分の一部になると、文化やサブカルチャーのメンバーをつなぐ共通言語として作用する。
そうした組織文化の受容と体現が、文化の学習と継承につながっており、組織の一員であることをより実感することになる。つまり、「染まる」ということである。
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