【キーワード】組織のサブカルチャー

組織内のサブカルチャー

組織文化はメンバーの大部分が共通して認める優位の文化のことを指すが、一方で、組織内には多くのサブカルチャー(下位文化)が存在する。

全体的な観点から、組織に固有の特徴と考えられるものが組織文化であるのに対して、担当部門や地理的条件によって決められる特徴がサブカルチャーである。

会社としての優位な文化を保ちながらも、営業、管理、製造、人事といったそれぞれの部門や、本社、○○支店、△△事業所などの地域的な枠組みによる下位の文化によっても、メンバーは影響を受ける。

メンバーや部門が共通して置かれている状況、直面している問題、経験などが反映されて形成されることになる。

【図:組織文化とサブカルチャーの関係図】

subculture

 

サブカルチャーには部門トップの色が出る

部門の性質や地理的条件に影響を受けながらも、その部門や拠点の、責任者や実質の力を持つリーダーもサブカルチャーに対して強い影響力を持つ。

銀行の支店では、同じ地域にありながらもまったく異なる雰囲気や行動パターンを示す場合がある。支店長の人格的な器やリーダーシップスタイルによって、社員の行動するルールが変わるからである。

また、部門トップが実質の力を持たない場合は、キーパーソンとなる実務トップのやり方がサブカルチャーを形成する。

したがって、部門の責任者になる人は、その組織がこれまでどのような文化を持っており、メンバーの考え方や行動にどう影響を与えていたかを観察し、分析を行うことで独自色を打ち出す方針が見えてくるだろう。

もっともやってはいけないことは、長年形成された組織文化をまったく尊重せずに、一気に何もかも変えてしまうことかもしれない。

もちろん、組織が面している状況にもよるが、「変えるべきところ」と「変えてはいけないところ」を見きわめる力がリーダーには求められる。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】組織文化

組織文化とは

組織文化は、次の2つの要素で成り立っている。

① 組織メンバーが共有する、組織が価値を置いている一連の特性

② その特性によって他の組織と区別できること

仮に、同業他社であるA社とB社を比較したとしよう。A社とB社では、同じものを見ても全く異なる考え方やアプローチをする。

たとえば、外食業をしている企業が、視察のために店舗を訪れたときにA社が「お店全体の雰囲気」を気にするのに対して、B社が「メニューや価格」を第一に注目するといったシーンでも見られる。

メンバーの行動や考え方、価値観が、組織によって知らず知らずのうちに規定され、しかもそれが反復的に起きる場合には、組織文化が強く影響していると考えられる。

 

組織文化を知る意味

上記で見たように、個人に性格があるのと同様に組織にも特徴的な性格がある。

たとえば、挑戦的、保守的、がんこ、柔軟、厳しい、ソフト、オープン、閉鎖的、などが当てはまる。

組織の性格とも言える組織文化について知ることで、そこに所属するメンバーの態度や行動を理解したり、予測したりすることができるのである。

なぜなら、組織文化はメンバーの活動上で頻繁に顔を出すからであり、ある働きかけを行ったときにどのように反応をするか、あるいは、トラブルや不祥事に対してどのように対応するかが予想できる。

 

組織文化を構成する要素

組織文化は、次に挙げる要素によって特徴づけられる。

1. イノベーション(革新性)とリスクへの態度

組織が、メンバーの革新的な考え方や行動を許容している。

メンバーがリスク(危険)を恐れないことがどの程度奨励されている。

2. 細部へのこだわり

ミスや不備に敏感で、細部に対して緻密さや、詳細にわたる分析、漏れの無い注意を示すことが期待されている。

3. 結果重視

結果または成果そのものを重視する程度。プロセスや工夫は二の次とされる。

4. メンバーへの配慮

重要な意思決定について、組織のメンバーに対して影響を考え、配慮がある。

5. チーム性

業務が、個人で行うべき仕事とチームで進めるべき仕事が明確かつ体系的に整備されている。

6. 競争的な態度

他社との競争を辞さず、むしろそれを望む態度がある。

7. 安定志向

将来的にわたり、現状維持が重要とされ、成長や変化が好まれない。

 

これらの要素について考えた場合に、ある要素について組織全体がどちらかに偏っている場合、それが組織文化となりえる。

たとえば、全体的な傾向として革新的でリスクテイクを恐れず、安定性を望む考えが欠けている場合には、組織が冒険心や挑戦心を大切にしており、やや向こう見ずに成長や変化に取り組んでいく組織文化があると考えられる。

 

組織文化は単なる説明にとどまる

7つの特性によって方向づけられる組織文化は、あくまでもメンバーがどのように感じているかという話(記述概念)であって、それが好きかどうか(評価概念)とは関係しない。

したがって、ある組織文化が、メンバーの職場環境に対する満足や職務への満足につながるとは限らないため、組織の問題をすべて組織文化で片づけるわけにはいかない。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【コラム】有効な離職防止策とは~社員が会社を辞める理由~

「社員は会社に入り、上司を去る」

という言葉がありますが、どれほどの核心を突いているでしょうか。

人はなぜ会社を辞めるのか、もちろんその理由はさまざまです。

辞める人が本当のことを言ってくれればいいですが、何となくにごされたり、真実を語らない場合もしばしばです(「あなた(社長or上司)のことが嫌いなんです」とは言えない)。

そうなると、辞める人の気持ちや離職理由を考える場合、まずは主観に頼ります。

しかし、そもそも会社を辞める気がない人、あるいは、絶対に辞められない人(オーナーや家族)では、客観的に起きている事実をとらえることは難しいのが事実です。

主観に頼った離職防止策は、空振りし(「それじゃないんだよ…」と従業員からは思われる)、やはり離職者は出てしまう。それが現実ではないでしょうか。

離職理由について、特に経営層や管理職層と、若者のジェネレーションギャップによるコミュニケーション不全が問題となるケースもあります。

そこで、現代の若者の全体的な傾向を知り、自社の状況に当てはめて考えてみることで有効な離職防止策が見えて来るのではないかと思い、このコラムを執筆しました。

今回は、15歳から34歳までの働いている若者たちを対象にした厚生労働省の調査をもとに考えます。

【参考データ】
厚生労働省 平成25年度 雇用の構造に関する実態調査(若年者雇用実態調査)
回答:全国の15,986人、15歳から34歳、正社員と正社員以外
詳細:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21.html

※グラフは弊社作成

 

そもそも、仕事に満足しているのか?

現在の職業生活に満足しているかを、項目別に尋ねた結果が図1、2のとおりです。

【図1:正社員の職業生活満足度 単位:%】

manzokudo1

※「不明」は非常に少なく表示していないため、回答の合計が100%にならない。

 

【図2:正社員以外の職業生活満足度 単位:%】

manzokudo2

特徴を箇条書きにします。

・正社員では、ほとんどの項目で「満足」と「やや満足」が50%前後

・正社員の「やや不満」と「不満」の合計は「賃金」が33.8%、「労働条件」が22.3%を除いて20%以下

・正社員以外の「やや不満」と「不満」の合計も「賃金」が35%と高いが、「労働条件」は14.7%とやや低くなり、その他の傾向は正社員と同じ

・正社員の「どちらでもない」が多く占める項目は「教育訓練・能力開発のあり方」が41.3%、「人事評価・処遇のあり方」が35.6%

・正社員以外は「どちらでもない」という回答の割合が全体的に多いが、「教育訓練・能力開発のあり方」、「福利厚生」、「人事評価・処遇のあり方」が特に多い。

 

満足のポイントは「賃金」、「教育」、「人事評価」

続いて、「満足」「やや満足」と答えた人の割合から、「やや不満」「不満」と答えた人の割合を引いた数字(満足度D.I.)を図3に示します。

これは、数字が大きくなればなるほど満足度の高い人が多く、不満足の人が少ないことを示します。逆に、数字が低いほど不満を表明している人が多い項目です。

【図3:満足度D.I(満足+やや満足)-(不満+やや不満) 単位:%】

manzokudodi

「賃金」の項目があからさまに低く、正社員以外にいたっては唯一マイナスに振れています。

「仕事の内容・やりがい」の項目では高い数字になっていますので、「これで給料さえもう少し高ければいいのに…」と思う人が多いからでしょうか。

「教育」「人事評価」に関しては、「どちらでもない」と答えている人の割合が多いため、このような結果に至っていると考えられます。

「人事評価」についていえば、結果的に「賃金」と結びつく可能性があるため、評価が反映されなければ、当然のように満足度は上がらないと考えられます。

しかし、だからと言って賃金をむやみやたらに上げることができない現状を考えると、売上の状況やコスト構造をしっかりと説明したうえで、賃金以外の部分で満足度を上げることが重要なポイントとなるのではないでしょうか。

教育訓練や人事評価制度にかけるコストは、賃金に比べればハードルが低いものと考えられます。

さらに、
教育やトレーニングを実施する
→従業員のスキル・態度が向上する
→顧客満足につながる→売上が上昇する
→給料に反映できる(人事評価の見直し) or さらに教育に投資する
といった好サイクルを望む、という選択肢も可能と考えられます。
もちろん、「そんな簡単にうまく行かないよ」という声も聞こえてきそうですが…。

実際、正社員では「労働時間・労働条件」で不満が多く見られるということは、日々の仕事に追われたり、休日まで出勤している様子がうかがえます。残業代が支払われていなかったり、サービス残業があって、それにも不満を抱えているのが現実であれば、そこに教育や研修をやろうものなら、さらに不満を招いてしまいます。

起きている現象をシステム的にとらえることで、これらの要因が複雑にからみ合っていて、単独の項目だけを改善すればよいという話ではないことがわかります。

「組織をどのようにしたいか」というビジョンと「なぜそのようにしたいのか」という思いを明らかにして、施策として具体化していくことが求められます。

 

過去に会社を辞めた(退職)理由

この調査では、過去に転職を経験した人に「最初に勤めた会社を辞めた理由」を尋ねています。それを示したのが次の図4です。

【図4:初めて勤務した会社をやめた主な理由(複数回答3つまで) 単位:%】

rishokuriyu

特に多い回答が「仕事が自分に合わない」「賃金条件」「労働時間」「人間関係」として挙がっています。

最初に見た通り、多くの人が「賃金」や「労働条件」に不満を抱えていることが、そのまま離職理由につながっていることがうかがえます。

さらに、「仕事が合わない」、「人間関係」といったソフトな面での理由が上位に挙がっていることは、従業員が内面の環境を重視して働いていることがわかります。

調査では、転職後に改善されたかまではわかりませんが、満足度で「人間関係」や「仕事内容・やりがい」の項目が高いということは、解決できたのかもしれません。しかしやはり、賃金だけは大きな改善には至らないのが現実でしょうか。

 

今の会社を辞めたい理由

「今の会社を定年までに転職したいか?」という質問もされています。

「したい」と答えた人は25.7%でした。

会社の規模で分けると次のような結果です。

1,000人以上:24.4%
300~999人:22.3%
100~299人:23.8%
 30 ~ 99人:27.1%
   5 ~ 29人:27.2%

大きければ転職希望者も少ないかと言えば、そういうわけではなく、100人から1,000人未満の中規模企業では比較的に少なく、小規模の企業では少し多めになっています。

また、業界によっても数字は変わります。

たとえば、電気・ガス・熱供給・水道業では10.9%、鉱業系12.9%、運輸業・郵便業17.2%、製造業の中でも素材関連では18.6%と、20%を切る業界があります。

一方で、医療・福祉業は35.0%、宿泊・飲食業は34.0%、小売業は32.7%、複合サービス事業は32.3%、情報通信(IT)業27.7%と平均を大きく上回る業界があるのも事実です。

医療・福祉と宿泊・飲食については、産業全体を見た場合に労働者数が圧倒的に多く、全国でも1位と2位を占めます。従事している人が多い分、転職希望者が多くなっているのが理由と考えられます。

そして、転職したい理由が何かを示しているのが次の図5です。

【図5:転職しようと思う理由(複数回答) 単位:%】

tenshokukibouriyu

やはり「賃金」「労働条件」を気にしていることは、若者全体に通じて言えることのようです。

「自分に合った仕事をしたい」、「自分を活かせる仕事をしたい」という理由が次に来ているのは、「最初に勤めた会社を辞めた理由」と一致するように、内面的な充実を望んでいることがわかります。

 

では、どうするのか?

全体をまとめると

・働いている若者の3人~から5人のうち1人は、転職したいと思っている

・満足度と転職理由では「賃金」をトップに、「労働時間」などが問題として挙がっている

・「人間関係」や「自分に合った仕事」など、内面的な問題も見逃せない

・「教育訓練」や「人事評価」は、間接的な影響があると考えられる

・従業員を取り巻くものが複雑にからみ合って現状を形成しているため、あるものだけを取り出して論じても仕方がない

などが言えると思います。

もちろん、会社によって個別具体的な事情や状況があって、簡単な話ではないのはよくわかります。

それぞれの会社の現実を見きわめたうえで、「では、どうするのか?」を考えていくのがトップや経営陣、管理職の仕事です。

まずは、今回ご紹介したような項目で社内の現状をデータ化してみることが、現状を認識する第一歩です。

そこから、自社に特有の問題と答えが、浮かび上がってくるのではないでしょうか。

 

離職防止の具体策と効果的な対策

参考までに、10,283の事業所を対象にした厚生労働省の調査データを示します。

まず、若手正社員の定着策を実施しているかいないかについて、70.5%が「実施している」と回答しています。

「定着のためにどのような施策を行っているか」、そして、「(その中で)最も効果のある対策はどれか」を示したものは、図6のとおりです。

【図6:若年正社員の定着のための対策(複数回答)と最も効果のある対策 単位:%】

taisaku

半数を超えるところで、「意思疎通(コミュニケーション)の向上」や「本人に合った配置」、「教育訓練」、「採用前の情報提供」が行われていることがわかります。

一方で退職理由や不満の多かった、「賃金」や「労働時間」に対する対策はやや減少することがわかります。

最も効果のある対策としては、上記の順番どおりで来ているものの、「採用前の情報提供」でやや数字が落ちます。これは、定着につながっているとなかなか感じられにくいのかもしれません。「仕事に見合った賃金」の効果が高いと10%程度が考えているのも印象的です。

一方で、「労働時間」についての対策はあまり効果を感じていないようです。

そもそも、どのように会社側(事業者側)は「社員が定着出来ている」と考えるのでしょうか?

他のデータでは、「直近1年間で若年者の離職があったかどうか」を尋ねる質問で、「あった」という回答が8割を超えています。

退職者がいるのはやむを得ないと考えつつも、会社に貢献してくれている社員を定着できていると考えるのは、普段のコミュニケーションによって社員の様子や状況を把握し、さりげないケアやフォローを行えているからかもしれません。

逆に言えば、コミュニケーションを取っていることで「効果のある」「ない」を判断できているとも考えられます。

そうなると、社員の定着の第一歩は、相互理解をつとめるために普段からコミュニケーションの機会をつくることが、自社にとって効果的な対策につながるのではないでしょうか。

本文や図表は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

 

【キーワード】精神性

精神性(せいしんせい)

精神性とは、人には内面的な生活があることを認識し、自らが所属する共同社会において有意義な仕事をすることで、そのような内面的な生活を充実させることができるとする考え方である。

精神性を重視する組織文化では、人は頭と心で考える存在であること、自分の仕事に意義や目的を見出そうとすること、自分以外の人とかかわりを持ち、共同社会の一メンバーでありたいと望んでいることを認識する。

これまで、ビジネスや組織経営においては精神性をことさらに取り上げられることがあまりありませんでした。しかし、人の感情を理解することで、組織における人々の行動をより理解することにつながることがわかっている。

 

精神性はなぜ必要か?

それではなぜ、精神性についての議論が現代で高まってきたのか?
様々な理由はあるが、主に次に掲げることがポイントとなる。

  1. 不安定な生活ペースから来るプレッシャーやストレスに対してバランスを取るため
  2. 一人親家庭、地理的な移動、一時的な雇用、対人間の距離を生んだ新技術など、現代のライフスタイルにより、多くの人が共同社会の欠如を感じ、人との関わりやつながりを求める欲求が高まっている
  3. 特に年齢層が上の世代で、自分たちの生活の中に何か特別なものを求めている
  4. 多くの人が必要に迫られて仕事中心の生活を送っているが、仕事の意義について絶えず疑問の念を抱いている
  5. プライベートな価値観を仕事生活にも反映させたいという欲求
  6. 経済的に恵まれた時代には、多くの人に最大の可能性を模索する余裕も生まれるから

つまり、時代の変化によって現代社会におかれた人々の感じ方や価値観が変わってきていることによると考えられる。

時代と人の変化に対応するため、精神性はひとつの重要なキーワードとなっている。

 

精神性を重んじる文化の特徴

精神性を重視する組織と、そうでない組織の違いについては、次の5つの要因があるとされている。

1. 目的意識が強い
精神性を重視している組織は、有意義な目的を文化の中心に置いている。利潤も重要であるとしながら、最も価値を置く基準ではない。

2. 個人の成長を重視する
人間は価値ある存在であると認識している。組織メンバーにただ仕事を与えるだけでなく、彼ら・彼女らが絶えず学び成長していくことのできる文化の構築を目指している。また、人材の重要性を認識して雇用保障にも努める。

3. 信頼と開放性
相互信頼、誠実さ、開放性を備えている。経営者や管理職は自らの過ちを認めることを恐れず、部下、顧客、取引先に対して非常に率直な態度で臨む傾向にある。

4. 組織メンバーへの権限委譲
精神性を重視する組織は、高い信頼関係が存在し、従業員が学び成長することを奨励する環境が整っている場合、経営陣は業務における大半の意思決定権をメンバーに委譲することになる。

精神性に基づく組織の経営者は、部下やチームに権限を委譲することに不安を抱かない。部下が思慮深い良心的な決断をくだすと信じているからである。

5. 感情表現に対する寛容さ
組織メンバーの感情を抑制しない。組織はメンバーに対し、自分自身であること(アイデンティティー)、つまり自分の気分や感情を表現することを認めている。

 

精神性と利益は両立するのか?

感情や仕事の意義・目的などのソフトなテーマが、利潤の追求というシビアなものと両立可能なものかどうかは、経営者や投資家にとって大きな問題となる。ケースは少ないものの、両者はかなりの割合で両立可能であることがわかっている。

ある調査研究によると、精神性に基づく手法を導入した企業は生産性が向上し、離職率が大幅に低下したという。また、別の研究では、従業員に対して精神的成長の機会を与えた企業は、そうでない企業よりも高業績を上げることがわかった。

さらに、組織における精神性が創造性、従業員の満足度、チームの業績、組織のコミットメントによい影響を与えることが報告されている。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】キャリア

キャリアとは何か

キャリアとは、人の仕事の経験や職業をまとめた経歴や職歴のことを指す場合が多い。また、ある人が仕事で得たスキルや能力、報酬や地位などを含めて話題にされる(キャリアアップ、キャリアチェンジなど)。

しかし、近年になってキャリアは単に仕事上のものだけではなく、個人の人生そのものを大きくとらえる概念に変化しつつあり、時代の変化によってキャリアに対する考え方も変わってきている。

ここでは、仕事と私生活を含めて個人が歩んできた過去と、今立っている現在、そしてそこからイメージする未来を大きくとらえたものとして考えたい。

 

キャリアについて考える意味

キャリアという言葉は、すべての人々にとって当たり前のものではない。

そんな言葉を一度も耳にせず仕事人生を終える人もいる。しかし、私たちすべてがキャリアという名の「道」を歩んでいるのは事実である(careerの語源は“車道“)。

普段、生活で自分が歩いている道について考えることはあまりない。道があり、その上を歩むことが当たり前と思っているからである。しかし、仕事人生やプライベートの計画はそれで済むのだろうか?

キャリアについて考えることは、自分が立っている道に気づき、過去とのつながりの中でどう将来を見ているか、自分の中で明らかにすることである。それはキャリアという言葉を知らなくても、考えることができる。

もちろん、キャリアについて考えたからといって何かが劇的に変化するわけではない。人によって、現状を肯定する材料であったり、変化への小さなきっかけであったり、将来に対する確認であったりするだろう。

キャリアについて考えることで不安や緊張によるストレスを感じるかもしれないし、本来こうありたかった自分のイメージを想い直し、前向きな感情を覚える創造的な機会になるかもしれない。いずれにせよ、キャリアを考えることは、“未来への準備”をすることと言える。

しかもそれは、社会や時代の変化、運や偶然性といった自分ではコントロールできないような物事を積極的に受け入れ、流されることなく自らの手足で現実をつかむ行為でもある。

 

時代によるとらえ方の変化

過去10~20年で、キャリアに対する組織と個人の役割は大きく変化した。

企業組織が社員のキャリア管理に対してほぼ全責任を負っていた時代から、いまや社員は自分自身の将来に対して責任を持たなければならず、企業はそれを支援する立場に変わった。

若者の意識をよそに、かつて日本企業の大勢を占め、美徳ともされていた終身雇用・年功序列は崩れ、上が下の面倒を見る温情的な雰囲気も失われつつある。

20世紀の間、企業は一つの企業で生涯通じて働く意思のある若者を採用し、優秀な社員には昇進の道が開かれ、責任と給与の増大、研修やさまざまな機会も提供する一方で、社員は忠誠心や勤勉さで報いていた。

しかし、こうした構図がもはや崩壊しており、今は不確実性が高まっている時代と言える。組織は将来を正確に予測することに限界を感じ、経営は業績を求める一方で、柔軟性を何より求めている。

このような状況ではかつての方法で社員に明確な道を示すことは難しく、したがって個人が自分のキャリア計画を立てなければならない。常に最新のスキル、能力、知識を身につけ、将来必要となる新しいタスクに向けて準備を進めることは、社員側に課されている。

career

 

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。