【キーワード】強い組織文化

強い組織文化

組織文化には強弱の程度がある。

その強弱は、次の2つのポイントによって決まる。

①文化の影響力
組織が持つコアとなる価値観が、ひとつの組織文化としてメンバーに対してどの程度の影響力を持っているか

②文化の共有範囲
コアとなる価値観を受け入れ、共有しているメンバーの数

たとえば、ある企業が「顧客への情報開示は積極的に行い、オープンにすることが望ましい」という価値観を掲げているとする。

上記の2つのポイントを基準に考えると

①文化の影響力
従業員が、実際に顧客に対して良い・悪い情報にかかわらずどの程度の頻度で顧客に対してオープンな行動を取っているか

②文化の共有範囲
オープンな行動をしている従業員がどれくらいの人数いるか

このように、行動の頻度と人数に比例して組織文化の強弱は測ることができ、組織マネジメントにおいて経営陣が掲げている価値観が有効かどうかを把握する手がかりとなる。

 

強い文化は離職を防ぐ

組織が強い文化を持つと、メンバーが行動や思考の拠りどころとする基盤が築かれることになり、そうした基盤の上にメンバーは一致団結し、組織に対して忠誠心を示したり、組織への関与を高めたりする。

明確で広く共有されている組織文化に従って行動することで、メンバーは確実に成果を挙げ、賞賛や評価を受けられる可能性が高くなる。

成果が挙がり、生産性が高まって「今日はいい仕事ができた」と思えると、職務への満足度が上がる。さらに周囲からの信頼や評価が高まると仕事がおもしろく感じられ、離職率は下がると考えられる。そして、組織文化に対するコミットメントがさらに強まり、好循環を生む。

もちろん、職場環境や待遇面の影響もあるだろうが、組織文化の強さという側面からメンバーの忠誠心や会社愛を見ることも可能である。

 

弱い文化

逆に、組織において拠りどころとなる価値観が、あいまいであったり、不明確であったりすると組織文化は弱くなる。

たとえば、経営理念として「顧客のために」という言葉を掲げていても、実際は社長や上役の顔色をうかがって社内にベクトルを向けなければならない雰囲気があれば、一貫性を欠いており、もはや経営理念が立派に書かれたものは紙くず以下の存在でしかない。

弱い文化が組織内にはびこると、離職が起こる可能性が高くなる。

なぜなら、掲げている理念や繰り返される言葉に対して、現実に求められるものがずれていれば、メンバーは行動の指針を失い、評価も不明確になってモチベーションが下がるからである。

強い文化は、ある種宗教的に強い存在力と影響力を持ち、メンバーの行動・思考様式を規定している。そのため、変化に対しては抵抗を示すが、弱い文化であれば変革や改革のチャンスが潜んでいる(上役の顔色を伺って「ノー」と言わないことが良い価値観とされ、それが暗黙のうちに広く共有されていれば、それはそれでひとつの強い文化となっており、変化は難しい)。

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【キーワード】組織のサブカルチャー

組織内のサブカルチャー

組織文化はメンバーの大部分が共通して認める優位の文化のことを指すが、一方で、組織内には多くのサブカルチャー(下位文化)が存在する。

全体的な観点から、組織に固有の特徴と考えられるものが組織文化であるのに対して、担当部門や地理的条件によって決められる特徴がサブカルチャーである。

会社としての優位な文化を保ちながらも、営業、管理、製造、人事といったそれぞれの部門や、本社、○○支店、△△事業所などの地域的な枠組みによる下位の文化によっても、メンバーは影響を受ける。

メンバーや部門が共通して置かれている状況、直面している問題、経験などが反映されて形成されることになる。

【図:組織文化とサブカルチャーの関係図】

subculture

 

サブカルチャーには部門トップの色が出る

部門の性質や地理的条件に影響を受けながらも、その部門や拠点の、責任者や実質の力を持つリーダーもサブカルチャーに対して強い影響力を持つ。

銀行の支店では、同じ地域にありながらもまったく異なる雰囲気や行動パターンを示す場合がある。支店長の人格的な器やリーダーシップスタイルによって、社員の行動するルールが変わるからである。

また、部門トップが実質の力を持たない場合は、キーパーソンとなる実務トップのやり方がサブカルチャーを形成する。

したがって、部門の責任者になる人は、その組織がこれまでどのような文化を持っており、メンバーの考え方や行動にどう影響を与えていたかを観察し、分析を行うことで独自色を打ち出す方針が見えてくるだろう。

もっともやってはいけないことは、長年形成された組織文化をまったく尊重せずに、一気に何もかも変えてしまうことかもしれない。

もちろん、組織が面している状況にもよるが、「変えるべきところ」と「変えてはいけないところ」を見きわめる力がリーダーには求められる。

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【キーワード】組織文化

組織文化とは

組織文化は、次の2つの要素で成り立っている。

① 組織メンバーが共有する、組織が価値を置いている一連の特性

② その特性によって他の組織と区別できること

仮に、同業他社であるA社とB社を比較したとしよう。A社とB社では、同じものを見ても全く異なる考え方やアプローチをする。

たとえば、外食業をしている企業が、視察のために店舗を訪れたときにA社が「お店全体の雰囲気」を気にするのに対して、B社が「メニューや価格」を第一に注目するといったシーンでも見られる。

メンバーの行動や考え方、価値観が、組織によって知らず知らずのうちに規定され、しかもそれが反復的に起きる場合には、組織文化が強く影響していると考えられる。

 

組織文化を知る意味

上記で見たように、個人に性格があるのと同様に組織にも特徴的な性格がある。

たとえば、挑戦的、保守的、がんこ、柔軟、厳しい、ソフト、オープン、閉鎖的、などが当てはまる。

組織の性格とも言える組織文化について知ることで、そこに所属するメンバーの態度や行動を理解したり、予測したりすることができるのである。

なぜなら、組織文化はメンバーの活動上で頻繁に顔を出すからであり、ある働きかけを行ったときにどのように反応をするか、あるいは、トラブルや不祥事に対してどのように対応するかが予想できる。

 

組織文化を構成する要素

組織文化は、次に挙げる要素によって特徴づけられる。

1. イノベーション(革新性)とリスクへの態度

組織が、メンバーの革新的な考え方や行動を許容している。

メンバーがリスク(危険)を恐れないことがどの程度奨励されている。

2. 細部へのこだわり

ミスや不備に敏感で、細部に対して緻密さや、詳細にわたる分析、漏れの無い注意を示すことが期待されている。

3. 結果重視

結果または成果そのものを重視する程度。プロセスや工夫は二の次とされる。

4. メンバーへの配慮

重要な意思決定について、組織のメンバーに対して影響を考え、配慮がある。

5. チーム性

業務が、個人で行うべき仕事とチームで進めるべき仕事が明確かつ体系的に整備されている。

6. 競争的な態度

他社との競争を辞さず、むしろそれを望む態度がある。

7. 安定志向

将来的にわたり、現状維持が重要とされ、成長や変化が好まれない。

 

これらの要素について考えた場合に、ある要素について組織全体がどちらかに偏っている場合、それが組織文化となりえる。

たとえば、全体的な傾向として革新的でリスクテイクを恐れず、安定性を望む考えが欠けている場合には、組織が冒険心や挑戦心を大切にしており、やや向こう見ずに成長や変化に取り組んでいく組織文化があると考えられる。

 

組織文化は単なる説明にとどまる

7つの特性によって方向づけられる組織文化は、あくまでもメンバーがどのように感じているかという話(記述概念)であって、それが好きかどうか(評価概念)とは関係しない。

したがって、ある組織文化が、メンバーの職場環境に対する満足や職務への満足につながるとは限らないため、組織の問題をすべて組織文化で片づけるわけにはいかない。

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【キーワード】チームの業績評価

チームの評価をどのようにするか

業績評価の対象は、主に個人が対象として考えられる傾向にある。

しかし、近年の流れとして業務をチーム単位で行い、チームがまとまりとして成果を出すような組織のつくり方を行う企業も現れている。チームの業務プロセスを促進するため「チーム・ビルディング」が注目を集めるなど、これまでの個人のみを対象とした考え方ではなく、業務を中心にしたチームに焦点を当てた考え方も求められている。

そのような中、チームの業績評価を行うために、次の4つのポイントが重要とされている。

1. チームの成果と組織の目的をつなげる

「医療サービスの改善と質の向上を支援し、社会貢献を行う」など、組織には必ず目的がある。

この大前提に対して、チームが挙げる成果が何であるかを明らかにして、目標を定めて、さらにそれを測定する方法を考える。

2. 顧客ニーズを満足するための業務プロセスについて考える

顧客に提供する製品やサービスには、必ず顧客が求めている要件や水準があるため、対顧客のチームについてはその要件や水準にもとづいて判断する。

社内間の取引がある場合は、納品までの時間やミスや不備がないことなど、社内サービスの品質において評価ができる。

また、以上を行うための業務プロセスやフローを分析したうえで、作業効率や成果を出すまでのサイクルタイムなど、重要となるポイントについて数値目標を設定して評価を行える。

3. 個人とチームの両方で評価する

業務プロセスにおいて、メンバーがチーム内で与えられている役割と責任に応じて評価項目を定め、チームの業績に対する個人の貢献度と、チーム全体が残した業績で評価を考える。

野球で言えば、1番バッターは出塁率や盗塁数で評価されるのに対して、4番バッターは得点圏打率やホームラン数によって評価され、最終的にはチームの勝敗についてそのプレーヤーがどの程度貢献したか、両方の観点で評価がなされることに例えられる。

4. チーム独自の評価をつくる

チームの性質に応じて、独自の評価基準を定めることもひとつの選択肢にできる。

チームの目標とメンバー各自の目標が定められると、役割の理解が進み、それぞれどのような強みを発揮して成果を出していくか、チームワークが発揮されることになる。

それにより、メンバーの業務へのモチベーションや連携の意欲が高まると考えられる。

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【キーワード】業績評価面談

評価面談が気まずい場合

評価面談は、評価者がメンバーに対して業績評価の結果を伝える、ひとつのコミュニケーションの機会である(考課面談とも呼ばれる)。

評価される者の内容がプラスで、さらに昇進や給与・賞与に反映されるパターンは、評価者にとっても非常にやりやすい。

しかし、評価がマイナスの場合や苦手とする相手に対する面談は、上司にとって気まずいものでしかない。

そもそも、その評価をしたのは自分である場合が多かったり、努力はしたものの全体の調整やオーナーの一存でマイナスに転じるケースもあったり、結局嫌われる役になってしまい、説明も難しい。

評価者にとっては複数のうちのひとつの評価であっても、あるメンバーの評価はその人にとってただひとつの評価であるから、余計に複雑である。

 

自己防衛

評価者自身が、保身や部下との対立を恐れるあまり、一歩踏み込まずになんとなく面談をしてしまったり、重要なポイントを伝えずに済ませてしまうと、評価をされた側の不信感がさらに募ってしまい、今後の人間関係にもマイナスの影響を与えかねない。

また、もし相手のマイナスのポイントや改善点を伝えられたとしても、「自分はそんなことない、一生懸命やっている」「○○さんはどうなんですか、自分だけが言われるのは納得できない」などと自己防衛に陥る可能性が高い。

元々給与が低かったり、休日条件などの待遇が悪かったりすると、「だいたいこの会社は…」など、メンバーが自分を改善するどころか非難の矛先を上司や組織に向ける結果になってしまうこともある。

 

自己評価>周りの評価

あるメンバーの評価が、組織全体の位置づけからすると平均よりやや下であったとしても、そのメンバーは「私は下から数えるよりも上位から数えた方が速いところにいる」と考える可能性が高い。

また、厄介なことにプラスの評価であっても「それでは足りない」と考える人もいる。

 

対策を考えるための3つの前提条件

以上のことに対応するためには、前提として3つの条件を整えておく必要がある。

1.評価制度が公平である

評価される側が、評価制度そのものに不信感を抱いている場合は、いくら言葉を尽くしても納得は得られがたい。評価する側とされる側の間だけでなく、プラス評価をされたメンバーとマイナス評価をされたメンバーの関係も悪くなる可能性があるだろう。

評価の仕組みと方法が透明であり説明が十分になされていることや、適正に手続きがされていると感じられることが大きな前提となる。

2.面談者が誠実である

面談者が不誠実で、好き嫌いや保身で面談の質を下げたり、一方的な非難や愚痴の場になれば、面談を受ける側はさらにストレスとなる。これでは、制度のバランスを損なう結果しかない

面談者に対しては、メンバーにが面談を生産的で有意義な場であると感じてもらうように研修や訓練を行うことで、一定の質が保たれることにつながる。

研修では、面談を単なる一方的な評価の場とするのではなくて、評価結果をきっかけとして次をどのようにするか、支援的な立場で接するにはどのようにするかといった内容が望ましい。

3.評価面談以外のコミュニケーションの機会がある

顔も合わせたことがない上司や自分の仕事を知らない相手から評価を受ければ、メンバーは評価に不満を持つ。

また、忙しいため「どうせ面談があるから」と日々のコミュニケーションをおろそかにしていれば、面談をうまく軌道に乗せるのに時間がかかったり、肝心なことが伝えられずに終わる場合もある。

普段から上司が部下の仕事を支援するつもりで、どういった行動が望ましいか、どのような仕事の進め方を心がければよいかなどを普段から心がけていれば、メンバーとしても評価への納得の程度は高まりやすい。

 

評価制度をなくす

業界の状況や会社の個別的な事情、制度の欠陥により、評価制度が機能していない場合もある。評価の目的が昇給や昇進につながるとしながらも、実際には見込みがまったくないパターンがそれに当たる。

また、実際の昇給は年次や序列で決まっていて大きな変化がなく、昇進も評価制度には関係のない項目で決められる場合(昇進試験の結果など)、何のための評価なのかを見直す必要があるだろう。

評価をする側も、される側も「意味がない」と思って無為に時間を過ごすよりは、ほかの生産的なことに時間を使うか、評価制度を組織の活性化の機会としてとらえ直してまったく異なる制度を構築した方が組織にとって有益だろう。

組織の規模にもよるだろうが、評価制度そのものをなくしてしまい、日々のコミュニケーションを充実させることにつなげたり、昇給や昇進のあり方をもっとシンプルな方式にする機会をつくることが、良い方向に進むきっかけとなるかもしれない。

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