交渉におけるコンフリクト
組織対組織の取引や相互関係において、交渉は付き物である。
仕入先との価格交渉といったものだけでなく、納期や仕様、条件などに関する細かい取り決めも交渉が必要となる。
また、組織外だけでなく、組織の内部でも交渉は絶えず起きている。たとえば、上司と部下の仕事の進め方に関するもの、他部署との調整などが当てはまる。さらには、経営陣と組合との賃金交渉や制度交渉も含まれる。
交渉は、自他の利害をすり合わせていくプロセスであり、まさにコンフリクトを避けられない(避けてはならない)場と言える。
交渉スキル
全ての仕事がトップダウンでない限り、タテ・ヨコ・ナナメの関係で仕事を進めることや、チームを基盤としてはたらく機会が増えている。
直接に支配できない関係やまったく対等の関係で、上司を持たずに仕事をするパターンもある。このとき、交渉を積極的に行う場面が必要となる場面が出てくるため、交渉スキルを獲得することが非常に重要と考えられる。
ここでは、交渉を「複数の当事者が財またはサービスを交換し、その交換レートについて合意しようとするプロセス」と定義して話を進める。
交渉戦略
交渉には一般的に2つのアプローチがあり、次のようにまとめられる。
①奪い合い型の交渉(ゼロサムゲーム) | ②統合型の交渉(ノンゼロサムゲーム) | |
---|---|---|
分配可能なリソースの量 | 固定的(分配の総量が100%と決まっている) | 変動的 |
主な動機 | どちらかが勝ち、どちらかが負ける | どちらも勝つ(Win-Win) |
主な利益 | 対立的 | 調和的 |
関係の焦点 | 短期的(敗者が生じるため、敵意や分裂を生む) | 長期的(絆や達成感を生み、将来関係をよくする) |
明確な特徴 | ゼロサムの状況下で、自分が得をすれば相手は損をし、自分が損をすれば相手は得をする。大きさの決められたパイを誰がどれだけ獲得するか。 | 当事者の双方が勝利を収める解決策が最低一つは存在するという前提下で行われる。1つのパイを分けるのではなく、パイを増やすという発想。 |
具体例 | ・中古品の買い手と売り手の価格交渉 買い手が1万円でも安く買えば、売り手は1万円の損をする ・労使間の賃金交渉 労働者側が1,000円多く獲得すれば、会社のコ スト負担がそれだけ上昇する | ・中古品の買い手に対して、売り手が同じ価格でオプション付きで販売する(高価な付属品等) ・顧客からの要求プレッシャーが強く、契約を失う可能性もあったが顧客の納期条件をゆるめてもらう代わりに、妥協可能な範囲で価格を下げる(顧客・営業・製造の全員が勝つ) |
どの戦略が望ましいのか
上の表を比較すると、統合型の交渉の方が望ましいように思われる。
しかし、組織において必ずしもそれが行われるわけではない。なぜなら、統合型の交渉が成功するには次の必要条件があるが、全て揃うことはまれだからである。
- 当事者が情報をオープンにする
- 関心事に率直である
- お互いに相手のニーズに敏感である
- お互いに信頼し合い、柔軟性をもって交渉に臨む意欲がある
組織において、このような条件が常に揃うとは考えにくく、「自分の利益を考えて自分が勝つ」ために交渉をしかけることが行われる。
また、こちらがオープンな態度で相手のニーズを探ろうとしても、相手が自分のニーズを「弱み」と捉えたり、こちらの態度を「甘い」と考える場合もある。
さらに、交渉では嘘や言い逃れ、あえて核心に触れないなどの戦術によって交渉を有利に進められることもある。
ある調査では28%の人が交渉中に共通利害について嘘をついたとする結果や、別の調査では100%の人が直接問題点に触れられなければ、交渉中に問題があることを公表しなかったり、そのことについて意図的に嘘をついたことがあると答えた結果もある。
交渉に臨む人の前提が、「交渉には本当も嘘もないものだ」と考えたり、「成功するには嘘をつかなければならない」と考えてたりしていると、こちらも同じ土俵に乗らざるを得ない。
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