「どうせ会社は変わらない」
「同じことの繰り返し。いつまで経っても学習しない」
組織の規模が大きくなると、そのような声がどこかから聞こえてきます。
企業で言えば、創業期や成長期は目まぐるしい変化が訪れ、立ち止まるひまもないほどに新しい仕事をこなし、社員数が増えればルールや組織体制が整えられていきます。
しかし、いったん安定期に入ると、組織が重みを増して時代の流れに伴う変化に抵抗しようとする傾向があります。
その正体はいったいどこにあるのでしょうか?
文化の変革を阻むもの
組織の実体は、それ自体を見たり、触ったりすることは難しいものです。
そのようなカタチのないものに、ぼんやりと輪郭を与えるのが組織文化だと考えられます。
組織の内外の人が、明らかに感じてはいるものの、それが何なのか、それを生み出している源が何なのか、明確にはできません。
もし、わかったとしても、その全体像をつかんで自由にコントロールすることは不可能だと感じてしまうかもしれません。
なぜなら、組織文化を構成するものは硬い地盤のようなもので、組織そのものを成り立たせている核となる部分だからです。
その核を維持しようとする力学が組織には発生しますが、具体的に次のものが挙げられます。
① 経営理念・哲学・信条・社訓などの明文化された方針
② 職場の空間、建物の設計、レイアウト
③ 支配的・独裁的なリーダーシップ・スタイル(ワンマン経営)
④ 従来の採用基準や昇進の慣行
⑤ 確立した儀式(朝礼、年一回の恒例行事、表彰式など)
⑥ 創業やキーパーソンの伝説的エピソード
⑦ 従来の評価基準
⑧ 組織構造(組織の構成、ヒエラルキー、指示命令系統のあり方など)
このように様々な組織を構成する要素が、内部にいるメンバーに対して複雑にからみあって作用し、組織メンバーを逆にコントロールしようとします。
そうなると、組織文化を変えようとする力に対して大きな抵抗を生じ、かえって、守る力が強くなり、守ろう、守ろうと作用すると考えられます。そのようにして成功をもたらした組織文化は維持されます。
組織文化を変える4つのチャンス
しかし、不動にして強固に見える組織文化も、次の4つの条件がそろうことで変えられるチャンスがあるとされています。
1. 劇的な危機が訪れるか、または、それを意図的につくり出す
組織の存在をおびやかすような危機感は現状を揺るがし、既存の組織文化のが妥当かどうか、注目されることになります。
劇的な危機のは、たとえば、予期せぬ財政悪化、大口顧客の損失、競合企業の大きな技術的躍進などが挙げられます。
また、組織文化の変革を促すため、経営陣が意図的に危機をつくり出すということもあります。
つまり、組織の存続を根本的に問うようなピンチに対しては、組織が変化への抵抗を弱めるということ、そして、何よりも組織のトップそのものが考え方を変えたり、スタイルを変化させることによって、文化を変えることにつながるということが言えます。
2. トップの交代
これまでとは異なる価値観を組織に取り入れるためには、文化の維持に大きく貢献しているトップを交代させ、新しい経営陣がリーダーとなることが必要とされます。
リーダーの交代は、基本的には危機に対応する場合であり、その能力に長けていると考えられます。たとえば、外部からトップを入れることで、新しい文化的な価値観が導入されるチャンスが広がります。
内部ではなく、外部から新しいトップを選ぶことは、内部のメンバーに対して変革の時が来たというメッセージになります。
一方で、リーダーが変わっても、メンバーの意識の中で「前と何も変わらない」と感じられていれば、組織文化の変革はなされないままとなる可能性が高くなります。
3. 設立後すぐの小規模な組織
ベンチャー企業のような歴史の浅い組織は、組織文化が定着していないため、変革を起こし、新しい価値観を取り入れることが簡単にできます。
売上数千億円規模、従業員数万人という大規模な組織の文化を変革することは、より困難となることは容易に想像できます。
大規模な組織の場合は、サブユニットに分けて考えたり、無駄なものを落としていくリストラクチャリング(再構造化、単なる解雇の促進とは異なる)が求められます。
4. 弱い文化
文化が組織全体に行きわたり、メンバーの間で同じ価値観が共有されているほど、文化は強いものになっています。
一方で、あまり文化が広く共有されていない場合には、弱い文化であり、変革を受け入れやすくなります。
以上が、組織文化の変革に必要とされる条件ですが、仮にこれらがそろったとしても、組織文化がすぐに変わることを期待することができません。
文化の変革は時間をかけて進むもので、その効果は年単位、つまり、長期的な目線で測るべきものと考えられます。
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