【キーワード】コンフリクト

コンフリクトとは

コンフリクト(conflict)は、元々は「武力対立」、「紛争」、「主義・主張の争い」、「心の葛藤」「矛盾」を意味する。

コンフリクトを組織という観点で見ると、人と人の対立や部門間の摩さつなどがイメージしやすい。なぜなら、実際に人間関係の悪化や、縦割り組織における部門同士のあつれきは必ずと言ってよいほど存在し、それが組織のパフォーマンスに影響を与えていることを、組織内のメンバーが認識しているからである。

しかし、対立や摩さつが必ずしも悪い結果にばかりつながっているわけではない。ここでは、「コンフリクト=悪いもの」という思い込みをいったん無くしたうえで、組織で用いるコンフリクトを次のように定義したい。

①組織内のメンバー間、または、部門間で生じる対立や不一致、摩さつなどの相互作用であり、

②その当事者全員が、対立等の存在を認識していること。

ここでのコンフリクトには、目標の不一致や事実の解釈をめぐる相違、期待する行動に関する食い違い、明らかな行為や暴力、意見の対立といった幅広いものを含む。仕事の進め方の相違、主張や考え方の対立、利害関係の不一致なども一般的に想定される。

また、継続的な活動を行う中で、メンバーや部門間の相互作用が「ある一線を越え」、コンフリクトに発展する時点があると考える。たとえば、ひとりのメンバーだけが何か影響を与えようと行動したとしても、それが空振りに終わり、誰も見向きもしない状況であれば、コンフリクトがあるとは言えない。

 

コンフリクトに対する3つの見方

コンフリクトは様々なとらえ方が可能であり、大きく次の3つに分けられる。

①自然とするとらえ方

コンフリクトは、あらゆる集団および組織で自然に起こるものと考える。

コンフリクトは避けられないのだから、コンフリクトを受け入れるよう訴える。コンフリクトは排除できないが、ある場合には業績にメリットをもたらすことさえあると主張する。

②奨励するとらえ方

組織においては、良い種類のコンフリクトを奨励すべきだと考える。

調和的で平穏、協力的な集団は停滞しがちであり、変化や改革の必要性に対して無関心かつ鈍感になりやすいというのが根拠(事なかれ主義の回避)。

集団のリーダーに集団を活性化して、自己批判する姿勢を持たせ、創造性を発揮するためには最小限のコンフリクトが必要であり、それを維持すべきと考える。

③否定的なとらえ方

コンフリクト=悪という、否定的な見解。あつれきや衝突、不合理といったマイナスの側面を重視し、コンフリクトは避けるべきものと考える。

コミュニケーションのまずさ、信頼のなさ、上司が部下の期待に応えられないといった機能不全が原因とする。コンフリクトはすべて避けなければならないと考えるので、コンフリクトの原因に注意を向け、問題を解決すればよいとする。

しかし、コンフリクトを減らすアプローチは必ずしも組織のパフォーマンスにつながらないとされている。

したがって、組織がコンフリクトに対して否定的なとらえ方に固執していると、パフォーマンスにつながらない無駄な時間やエネルギーを使うことになったり、議論や問題解決が避けられてしまったりする可能性がある。

 

コンフリクトの種類

コンフリクトには良いコンフリクトと、そうでないものがある。

コンフリクトを奨励するとらえ方では、コンフリクトの種類を区別して、集団の目標達成を支援し、業績を向上させるような生産的で建設的な形の「生産的コンフリクト」を奨励している。

逆に、組織のパフォーマンスを下げてしまう「非生産的コンフリクト」もあり、基本的にそれは避ける姿勢となる。

①業務コンフリクト

仕事の進め方や内容、業務目標について、議論や問題提起を行い、当事者には意識的に仕事に取り組んでもらうことが目的であり、生産的コンフリクトと考えられる。

業務コンフリクトが機能するには、仮説にもとづいた議論をもとに検証と振り返りを行って、改善する態度が必要であって、議論ばかり行うようなコンフリクトはかえってパフォーマンスを低下させてしまう可能性がある。

組織のパフォーマンスをを向上させることを第一の目的としており、業務のあり方やプロセス、仕事の割り振り、責任の明確化、目標などを焦点にして話を進めるため、議論のゴールが見えやすく一致しやすい。

多くの場合、「誰が言ったか」など人とからめて考える傾向があるため、仕事の話で議論をしていても、いつの間にか人の問題になり、非生産的コンフリクトに移行してしまう。

業務コンフリクトは、仕事に役立つアイデアを議論し、場を活性化させることにつながるため、パフォーマンスに常にプラスの影響を与えるものであり、奨励すべきものである。

②対人コンフリクト

人間関係のあつれきや摩さつのことを指し、ほとんどの場合は非生産的である。

人間関係の悪化はメンバー同士による対立や衝突が増えてしまい、相互理解が進まなくなってしまう。

その結果、組織における仕事の進行や完結を妨げ、パフォーマンスを低下させる。

メンバー同士の相性やそりが合わなくて、お互いをライバル視して競争するパターンも見られる。このとき、お互いの仕事を邪魔したり、横槍を入れて自分の利益になるような行動を行うと、非生産的コンフリクトが発生する。

しかし、ライバル心を基本にして、目標達成やプロセス改善にのみメンバーが注力して競争すれば、パフォーマンスは高まると考えられる。

このような現実的な人間関係をもとにしたマネジメントの考え方は、組織のデザインや職務プロセスの設計に関係するところとなる。

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【キーワード】実務試験(ワークサンプル法とアセスメント法)

採用面接のみでは判断しにくい項目について、筆記試験や適性検査を実施するケースが多く見られる。

しかし、面接で行われるような表面的かつ一時的なコミュニケーションや、筆記試験などで得られる情報から、本当にその人物が仕事ができる人かどうかを見きわめることは難しい。

そこで、注目されるのが実務試験である。

 

ワークサンプル法

海外の工場などで実務試験を取り入れているひとつの実務試験が、ワークサンプル法である。

ワークサンプル法は、職場または実務シミュレーションができる場で、入社後に担当する実際の仕事をしてもらい、そのパフォーマンスを評価する方法である。

ワークサンプリングなどとも呼ばれ、全体の作業工程から一部の工程を抜き出して観察・分析して、工程管理や業務改善、第三者による監査に用いられる手法であり、これを採用に応用したものとなる。

この場合、仕事の全体または一部を実施し、その業務に必要とされる知識やスキルなどあらかじめ用意されたチェック項目をもとに、実際のパフォーマンスと照らし合わせて評価を行う。

ワークサンプル法は、技術者や工場労働者のキャリア採用に主に活用され、筆記試験よりも有効と考えられている。

 

アセスメント法

ワークサンプル法が技術的な業務に応用されるのに対して、管理職や経営幹部としての能力を評価するための手法がアセスメント法である。

こちらも、応募者が入社後に実際に直面する可能性が高い問題や課題に対して、どのように対応するか、問題を解決するか、そのシミュレーションを行って評価する。

実業務から抽出された項目に応じて、面接や問題解決シミュレーション、グループ・ディスカッション、ビジネスゲームなどに取り組む。

単なる面接や書類からは得られない情報に触れられるため、採用後のパフォーマンスを予測できる有効な手法として、評価されている。

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【キーワード】採用面接

組織の業績は、業務を担う力(労働力)の質に依存する。

そして、業務を担うのは基本的に人であり、どのような人材を採用するかが業績に直結すると考えてよい。

したがって、人材の質は組織の業績を左右する。

もし能力の低い人材を採用してしまえば、モチベーションを上げる仕組みや効率的な業務設計がなされていたとしても、そのメンバーのパフォーマンスは上がらない可能性が高い。結果として、組織の業績は上がるどころか、下がってしまう。

採用候補者の質やレベルを見きわめ、採用後にそのメンバーが優れたパフォーマンスを発揮するためには、大前提として優れた採用プロセスが必要となる。

では、組織はどのような採用プロセスを踏むべきか。ここではまず一般によく行われる面接を取り上げる。

 

採用面接の重要性

組織にメンバーを受け入れようとする場合、面接は広く、かつ、頻繁に用いられる手法である。

面接は非常に重要視されており、権限を持つ人物が候補者に会ってから最終的に採用の可否を決める。

書類選考や適性検査、筆記試験などは大量の応募者を選別し、採用業務を効率的に行うために実施されるが、その次のステップでは必ずといってよいほど面接が最後の関門として用意されている。

したがって、面接が採用の決定に大きな影響を与えており、組織も重視していることは事実である。

 

採用面接の有効性

面接はどのような場合に有効なのだろうか?次の3つについて調べる場合、最も有効であると考えられている。

 ①応募者がどれくらい知性的であるか

 ②応募者はこちらの採用に関してどれくらいモチベーションがあるか(志望度がどの程度高いか)

 ③対人的なコミュニケーションスキルがあるか

この3つが、採用後に行う仕事のパフォーマンスと結びつくことが明らかである場合、面接は特に有効となる。

したがって、経営幹部や上位の中間管理職を採用する際には、必ず面接が行われる。

また、パフォーマンスの予測だけでなく、面接によって応募者と組織文化との相性を見ていると言ってよい。

組織の既存メンバーとうまくやっていけそうか、トップからはどう見られるか、上司になるメンバーと仕事が進められそうか、組織の雰囲気に合うかどうか、などが面接において見られていることは疑いない。

 

面接への疑問視

一方で、ある応募者が、いくらキャリアを積んでいたり、試験の点数がよかったりしていても、面接での印象が悪ければ候補から外されてしまう。

逆に、その人物が決して組織が望むパフォーマンスをあげられるような優秀な人材ではなかったとしても、面接でのテクニックを身につけていれば採用される。

入社してしまえば、後の祭りである。ミスマッチが起きたとしか言えない。なぜこのようなことが起きてしまうのだろうか?

それは、面接が合理的に行われていないからである。

たとえば、面接で短い時間の中で、面接官が特に基準もなく適当なさじ加減に頼って質問を投げかけ、それで採用を決めてしまう場合がそれに当たる。

面接のトレーニングを積んでいない面接官は、さまざまなバイアスを抱えており、面接で得られる視覚的な情報、耳から入る情報に対してゆがんだ見方をする。

このような状況では、応募者の将来のパフォーマンスを予測することなど不可能に近い。

たとえば、バイアスを持った面接官は自分と似た考え方をする応募者を採用しようとする。さらに、マイナスの情報を、プラスの情報よりも重視してしまう。

さらに、面接の順番によって採用判断が変わることなども当てはまる(面接に慣れてくると、後の面接の方が見方が厳しくなる、など)。

したがって、面接が合理的に行われているかどうかを検証しなければ、採用プロセスが適正に踏まれているかどうかは疑問である。

 

面接時の3つのポイント

組織は、次の3つの点に注意して採用面接の仕組みを設計しなければならない。

 ①面接官の質問を揃える(標準化する)

 ②面接官が同じ方法で質問への回答を記録する

 ③応募者の評価基準を統一する

このようにシステマチックに採用を設計し、さらに面接官がバイアスを克服できるようにトレーニングすることで、採用プロセスは一定の程度で合理化されると考えられる。

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【キーワード】顧客志向文化

顧客のロイヤルティ(ファン、リピーターの獲得)や長期的な収益につながる具体的な案として、顧客志向文化の構築が挙げられる。

顧客志向文化を構築し、強力な顧客基盤を固めることで、収益成長率や財務業績において競合他社を引き離すことができる。

なぜなら、多くの企業では階層や指示命令系統が基盤となっており、メンバーがトップや上司の顔色をうかがいながら仕事を進めるという、内向的な文化の方が普通だからである。つまり、組織内における顧客へのサービス精神育成が差別化につながる、ということである。

組織メンバーの関心や注意が内向きになればなるほど、外部である顧客に対するベクトルが弱まり、顧客喪失や競合との敗北につながる可能性が高い。

組織が競争を生き残るためにも、全体のベクトルを可能な限りにおいて、外に向けるような仕組みと、それを促すような組織文化の構築が求められる。

 

顧客志向文化を構築するための6条件

顧客志向文化を構築するには、次の6つの条件が関係する。

① メンバーのタイプ
性格が社交的で親しみやすいメンバーを採用しているかどうか。

② ルール化・マニュアル化の程度
サービス担当者には、さまざまな顧客に対するサービス要件に対応するための裁量権を与え、それを満たすために制約を取り去っているかどうか。

厳格な規則、手続き、ルールがあると、顧客志向のサービスの提供が困難となる。

③ 権限委譲
顧客のサービス担当者に、顧客満足につながる行動に必要な意思決定を下せるような権利が与えられているかどうか。

④ 傾聴スキル
サービス担当者が、顧客の発信するメッセージに耳を傾け理解する能力を有するかどうか。

⑤ 役割の明確化
サービス担当者が、組織と顧客の間で橋渡しの役割を担っているかどうか。

組織内の上司やトップと、顧客双方の要求に応える必要があり、役割のあいまいさや対立が高まると職務満足感が低下し、業績も損なわれかねない。

顧客志向文化がうまく機能すれば、最良の仕事の方法(ベストプラクティス)や重要な業務にかかわる不確実性は減少する。

⑥組織が効果的になるために役立つ行動を取る
顧客志向文化のメンバーは、心から顧客を満足させたいと考えており、顧客のニーズを満たすためには、通常の業務範囲を超えた行動も積極的に取ろうとするかどうか。

その行動は、マニュアルや職務記述書には細かく書いておらず、公式化されていない。

 

顧客志向文化構築のための6つの施策

以上の要素を踏まえて、顧客志向文化の構築のために次のような対策が考えられる。

① 選抜採用
サービス志向の強い性格や姿勢を持ったサービス担当者を採用することが出発点となる。

親しみやすさ、熱意、気配りのあるサービス担当者は、サービスの質に対する顧客の感じ方に良い影響を与える。

② 研修と社会化
すべての組織が①のようなメンバーを新たに採用できるとは限らない。

したがって、採用よりも研修や参加プログラムに重点を置き、商品・サービス知識の向上、傾聴スキル、忍耐、感情の表現に焦点を当てる。

③ 権限委譲(エンパワーメント)
ルール化やマニュアル化の程度を低くし、メンバーに対して業務に関する日常の意思決定を行う裁量権を委譲する。

④ リーダーシップ
顧客志向文化におけるすぐれたリーダーは、顧客中心のビジョンを伝え、顧客のために全力を尽くすという姿勢を常に示すことで職務を果たしている。

メンバーに対して、そのようなリーダーシップ開発に努めることも有効となる。

⑤ 業績評価
結果の数字ではなく、努力、コミットメント、チームワーク、問題解決などのサービスの質が向上する行動を評価する。

⑥ 報酬システム
顧客満足につながる目立った取り組みを認め、非常に優れた顧客サービスを昇給・昇進・報酬の条件とする。

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【キーワード】組織文化の学習

メンバーはどのように組織文化を学ぶか

組織に参加したメンバーは、研修やOJT以外の場でどのように組織文化に触れて、それを受け入れるだろうか。

組織文化の特徴が表れるものとして、次の4つが挙げられる。

伝説

多くの組織で、伝説的な話や誰もが知っている話というものがあります。

そのようなエピソードには多くの場合、創立者についての話や型破りな決断・対応、誰もが笑える話、貧乏から金持ちへと成功した話(売上や給料が上がっていった話)、人々の記憶に残る経営決定、労働力の減少(リストラや大量離職)、メンバーの配置替え、過去のミスに対する反応や組織の対応が含まれます。

また、エピソードは過去と現在をつなぎ、現在の行動についての説明を正当なものにしようとします(「昔、こういうことがあったから・・・」)。

多くの伝説的エピソードは、創業者や偉大な社員の人柄を知るきっかけともなるし、危機に面した時の有効な考え方、行動の説明をしている。メンバーはそこから組織の価値を知ることができる。

 

行事・儀式

恒例行事や記念となる儀式は、組織の基本的価値観を表現・強化するもので、どのような目標が最も重要か、そしてどのようなことは犠牲にしてもよいのかを示す。

たとえば、朝礼で特定の掛け声や社歌を全員で唱和したり、優れた業績を残したとされるメンバーを表彰したり、社内運動会や経営発表会など年に一度の恒例行事を催すことで、社内の結束を強化し(かえって弱まるパターンもあるが…)、メンバーの士気を高める手段として使われる。

 

物・シンボル

会社によって、経営幹部には運転手つきのリムジンが提供される(米では自家用ジェット機の使用なども)。リムジンでなくとも、会社負担によって車が提供されたり、ファーストクラスでの航空機利用が許されたりする場合もある。

会社によっては、役員室などは閉鎖された空間がほとんどなく、基本的に、間仕切りで小さく区切った仕事スペース、共有エリア、会議室で構成されているところもある。

そのような飾らない会社のあり方は、メンバーに対して同社が開放性、平等、創造性、柔軟性に価値を置く会社であることを示している。

本社のレイアウトや経営幹部に提供される物は、物的シンボルの一例で、オフィスのサイズや凝った家具類、重役手当、服装、骨とう品や絵画を置くなども含まれる。

これらの物的シンボルは、組織メンバーに対して、重要な立場にあるのは誰か、経営陣はどの程度の平等を求めているのか、誰に対してどのような行動が適切かを示している。

言語(専門用語)

多くの組織では、仲間うちだけで通じる言語(企業用語・業界用語)を用いる。

これにより、同じ文化またはサブカルチャーのメンバーとして確認される。メンバーは組織内で通用する言語を学ぶことで、文化を受け入れていることを証明し、それによって文化の保存に貢献する。

また、組織は、業務に使用する機械、人、取引先、顧客、商品やサービスを表現するための専門用語をつくる。新メンバーや外部の人は、それらの略語や意味不明な用語に戸惑うこともあるが、しばらくすると慣れてしまって、いつの間にか自分で使うようになる。

専門用語が自分の一部になると、文化やサブカルチャーのメンバーをつなぐ共通言語として作用する。

そうした組織文化の受容と体現が、文化の学習と継承につながっており、組織の一員であることをより実感することになる。つまり、「染まる」ということである。

learn_orgculture

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