力は、公式の地位や権限から生まれるとはかぎらない。
組織においては、そのような形式的なものに頼らずに力を発揮できる人物が必ずいる。そのタイプの人物は、私的な力を持っていると言える。
公式の力を手に入れる可能性がところ低いが組織で力を発揮したいと考える場合や、公式権力を手に入れたとしても名実ともに備わったリーダーを目指したいと思う人には、次の3つの力が参考になるだろう。
① 専門力
専門力とは、専門技術や特殊なスキル、知識を持つ結果として行使される影響力を指す。世界的にも、日本国内においても技術志向が高まるにつれて、専門技術は最も強力な影響力の源となっている。
また、仕事が専門化するにつれて人々は目標達成のために「専門家」に依存するようになった。大半の人が医師の助言に従うことは、医師が専門技術を持つことで力を行使しているし、IT専門家、税理士、弁護士、産業カウンセラー、その他の専門家なども専門知識によって影響力を持つことができる。
そして、そのような資格が専門力を表すパターンだけではなく、組織においては周囲から認められることで発揮できる専門力もある。すなわち、ある個人特有のスキルであったり、考え方、情報と知識をかけあわせて発信できる能力などが当てはまる。
ともすれば、仕事や知識を囲い込んでいるとも思われかねないが、「〇〇のことはあの人に聞けばいい」と言われるくらいまで自分の知識や能力を磨くことは非常に重要と考えられる。
② 同一化による力
AがBにとって好ましい資質や個性を持つ場合、BはAと自分を同一化させる(同じようになりたいと思う、あるいはモデルとする)。この場合、BがAを高く評価してAを喜ばせたいと思うため、AはBに対して力を行使することができる。
同一化による力は、他人への賞賛やその人のようになりたいと思う欲求から生じる。野球少年たちはイチローが使っているメーカー製品を同じように使いたいと思うだろうし、人気モデルや歌手のファッションを真似するなど、同一化による力がいつの間にか行使されている例は枚挙にいとまがない。
同一化による力を発揮するには、組織においてある程度の存在感を持つ必要がある。したがって、これは一朝一夕で身につけられるものではないだろう。
③ カリスマ性
カリスマ的リーダーは、部下を追従させるための力を持っている。
魅力的なビジョンを明確に表現できる、個人的リスクを取る、環境やフォロワーに対する配慮を示す、型破りな行動を取る意欲などが当てはまる。
しかし、多くの企業には公式のリーダーとしての地位はなくても、カリスマ的な資質を持ち、それを強みとして他人に影響を与えている人もいる。
カリスマ性は、持って生まれた資質やパーソナリティ(性格)、教育訓練、自己研鑽など様々な要素を含むため意図的にこういった力を持つことは難しいかもしれない。
したがって、私的な力を持つための第一歩は、やはり学習や積極的な経験獲得などの「自分を磨くこと」から始まるのではないだろうか。
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