【キーワード】組織文化

組織文化とは

組織文化は、次の2つの要素で成り立っている。

① 組織メンバーが共有する、組織が価値を置いている一連の特性

② その特性によって他の組織と区別できること

仮に、同業他社であるA社とB社を比較したとしよう。A社とB社では、同じものを見ても全く異なる考え方やアプローチをする。

たとえば、外食業をしている企業が、視察のために店舗を訪れたときにA社が「お店全体の雰囲気」を気にするのに対して、B社が「メニューや価格」を第一に注目するといったシーンでも見られる。

メンバーの行動や考え方、価値観が、組織によって知らず知らずのうちに規定され、しかもそれが反復的に起きる場合には、組織文化が強く影響していると考えられる。

 

組織文化を知る意味

上記で見たように、個人に性格があるのと同様に組織にも特徴的な性格がある。

たとえば、挑戦的、保守的、がんこ、柔軟、厳しい、ソフト、オープン、閉鎖的、などが当てはまる。

組織の性格とも言える組織文化について知ることで、そこに所属するメンバーの態度や行動を理解したり、予測したりすることができるのである。

なぜなら、組織文化はメンバーの活動上で頻繁に顔を出すからであり、ある働きかけを行ったときにどのように反応をするか、あるいは、トラブルや不祥事に対してどのように対応するかが予想できる。

 

組織文化を構成する要素

組織文化は、次に挙げる要素によって特徴づけられる。

1. イノベーション(革新性)とリスクへの態度

組織が、メンバーの革新的な考え方や行動を許容している。

メンバーがリスク(危険)を恐れないことがどの程度奨励されている。

2. 細部へのこだわり

ミスや不備に敏感で、細部に対して緻密さや、詳細にわたる分析、漏れの無い注意を示すことが期待されている。

3. 結果重視

結果または成果そのものを重視する程度。プロセスや工夫は二の次とされる。

4. メンバーへの配慮

重要な意思決定について、組織のメンバーに対して影響を考え、配慮がある。

5. チーム性

業務が、個人で行うべき仕事とチームで進めるべき仕事が明確かつ体系的に整備されている。

6. 競争的な態度

他社との競争を辞さず、むしろそれを望む態度がある。

7. 安定志向

将来的にわたり、現状維持が重要とされ、成長や変化が好まれない。

 

これらの要素について考えた場合に、ある要素について組織全体がどちらかに偏っている場合、それが組織文化となりえる。

たとえば、全体的な傾向として革新的でリスクテイクを恐れず、安定性を望む考えが欠けている場合には、組織が冒険心や挑戦心を大切にしており、やや向こう見ずに成長や変化に取り組んでいく組織文化があると考えられる。

 

組織文化は単なる説明にとどまる

7つの特性によって方向づけられる組織文化は、あくまでもメンバーがどのように感じているかという話(記述概念)であって、それが好きかどうか(評価概念)とは関係しない。

したがって、ある組織文化が、メンバーの職場環境に対する満足や職務への満足につながるとは限らないため、組織の問題をすべて組織文化で片づけるわけにはいかない。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】精神性

精神性(せいしんせい)

精神性とは、人には内面的な生活があることを認識し、自らが所属する共同社会において有意義な仕事をすることで、そのような内面的な生活を充実させることができるとする考え方である。

精神性を重視する組織文化では、人は頭と心で考える存在であること、自分の仕事に意義や目的を見出そうとすること、自分以外の人とかかわりを持ち、共同社会の一メンバーでありたいと望んでいることを認識する。

これまで、ビジネスや組織経営においては精神性をことさらに取り上げられることがあまりありませんでした。しかし、人の感情を理解することで、組織における人々の行動をより理解することにつながることがわかっている。

 

精神性はなぜ必要か?

それではなぜ、精神性についての議論が現代で高まってきたのか?
様々な理由はあるが、主に次に掲げることがポイントとなる。

  1. 不安定な生活ペースから来るプレッシャーやストレスに対してバランスを取るため
  2. 一人親家庭、地理的な移動、一時的な雇用、対人間の距離を生んだ新技術など、現代のライフスタイルにより、多くの人が共同社会の欠如を感じ、人との関わりやつながりを求める欲求が高まっている
  3. 特に年齢層が上の世代で、自分たちの生活の中に何か特別なものを求めている
  4. 多くの人が必要に迫られて仕事中心の生活を送っているが、仕事の意義について絶えず疑問の念を抱いている
  5. プライベートな価値観を仕事生活にも反映させたいという欲求
  6. 経済的に恵まれた時代には、多くの人に最大の可能性を模索する余裕も生まれるから

つまり、時代の変化によって現代社会におかれた人々の感じ方や価値観が変わってきていることによると考えられる。

時代と人の変化に対応するため、精神性はひとつの重要なキーワードとなっている。

 

精神性を重んじる文化の特徴

精神性を重視する組織と、そうでない組織の違いについては、次の5つの要因があるとされている。

1. 目的意識が強い
精神性を重視している組織は、有意義な目的を文化の中心に置いている。利潤も重要であるとしながら、最も価値を置く基準ではない。

2. 個人の成長を重視する
人間は価値ある存在であると認識している。組織メンバーにただ仕事を与えるだけでなく、彼ら・彼女らが絶えず学び成長していくことのできる文化の構築を目指している。また、人材の重要性を認識して雇用保障にも努める。

3. 信頼と開放性
相互信頼、誠実さ、開放性を備えている。経営者や管理職は自らの過ちを認めることを恐れず、部下、顧客、取引先に対して非常に率直な態度で臨む傾向にある。

4. 組織メンバーへの権限委譲
精神性を重視する組織は、高い信頼関係が存在し、従業員が学び成長することを奨励する環境が整っている場合、経営陣は業務における大半の意思決定権をメンバーに委譲することになる。

精神性に基づく組織の経営者は、部下やチームに権限を委譲することに不安を抱かない。部下が思慮深い良心的な決断をくだすと信じているからである。

5. 感情表現に対する寛容さ
組織メンバーの感情を抑制しない。組織はメンバーに対し、自分自身であること(アイデンティティー)、つまり自分の気分や感情を表現することを認めている。

 

精神性と利益は両立するのか?

感情や仕事の意義・目的などのソフトなテーマが、利潤の追求というシビアなものと両立可能なものかどうかは、経営者や投資家にとって大きな問題となる。ケースは少ないものの、両者はかなりの割合で両立可能であることがわかっている。

ある調査研究によると、精神性に基づく手法を導入した企業は生産性が向上し、離職率が大幅に低下したという。また、別の研究では、従業員に対して精神的成長の機会を与えた企業は、そうでない企業よりも高業績を上げることがわかった。

さらに、組織における精神性が創造性、従業員の満足度、チームの業績、組織のコミットメントによい影響を与えることが報告されている。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。

【キーワード】キャリアの現実

組織におけるキャリアの現実

組織の中でキャリアを順調に発達させ、望み通りなし遂げられるケースは少ない。

組織の内部には、個人のキャリアに対する障害、ぶつかるべき壁など様々な要素があるからだ。たとえば次のようなものが挙げられる。

1. ポスト
昇進できるポストに限りがあったり、名ばかりの管理職名がつくられたりするなど、出世欲のあるメンバーの望みがかなえられにくいパターンがある。

また、社内の年齢構成のいびつさによって、年功序列の場合は管理職候補が多くなってしまい滞留するパターンや、ある世代だけが少ないためにマネジメントを担える層が少なく、人的リソース不足に陥り、若手が育たないまま組織の将来を担うこともある。

いずれの場合でも、ベテラン、若手をとわずキャリアの行方について暗澹たるものを持たざるをえない。

もちろん、すべての人が出世をしたいと思っているわけではない。近年では、仕事とプライベートのバランスを第一に考える風潮が若者を中心に出てきたり、肩書きも階層もない「ホラクラシー」と呼ばれるフラットかつ自由な組織風土をつくる試みも見られる。

2.報酬制度
給与や賞与といった、組織内の資源をどのように配分するかというテーマは永遠の課題のように思える。

業界、業種によっても相場があり、会社の規模や業績によって給与の限界が生じる。もらえる金銭の多寡で自分の価値を決める人もいれば、私生活を充実させるために給与を考える人もいる。

そのようなタイプにとっては、いくら理念だやりがいだときれいごとを言ったとしても、報酬制度の中身がキャリアイメージに良くも悪くも影響を与えているのが、組織の現実である。

3.同僚・先輩・上司のキャリア
メンバーはさまざまな情報を上司や先輩の現実の姿から得る。特に、学歴やスキル、年齢などの要素から自らの将来的なキャリアイメージを形づくり、期待を持つ人もいれば、絶望する人もいる。

たとえば、同じ年の入社でメンバーを眺めた時に、昇進や昇給が速いかどうかは大きな要素である。

また、若手や新参者にとって、模範となるメンバーはどれくらいいるだろうか。組織の質とレベルは、メンバー層の厚さによって決まると考えられる。採用や組織づくりにおいては、新しいメンバーよりも、古くからいるメンバーに余計に注意を払う必要がある。

4.学習や成長を促すかどうか、昇進への考え方などキャリアに対する組織文化や制度
組織がメンバーのキャリアに対する積極的な意識を持ち、学習や成長を促したり支援したりする文化と制度があるかどうかは、メンバーのキャリアにとって大きな意味を持つ。

そもそも「自分に成長が求められている」などと思ったこともない人も世の中にはいる。さらに、レベルアップが暗に求められているのに「自分は学習する必要などなく、今のままぶら下がっていればよい」と考えている人もいる。それらは組織と個人それぞれのキャリアに対する意識に応じて異なる。

5.個人に与えられた役割・専門性
○○会社に勤めるAさんが、他の企業でも中途採用として通用するだろうか?

その問いに答えるには、Aさんがこれまでどのような役割を与えられ、何の専門性や知識、スキルを持ち合わせていて、どれほどの業績を残してきたかによるだろう。

もし、Aさんが○○会社でのみ通用する知識や技能を持ち合わせている場合、どれほどすばらしい成果があったとしても他では採用されない可能性が高い。

そのような、ある一定の条件下でしか発揮できない知識・技能を企業的特殊能力と呼ぶ。組織メンバーにとって、一般に応用できない経験ばかりを積み重ねる状況は、伸るか反るかの勝負と感じるかもしれない。

 

個人はこのような組織内部の要素、そして組織が置かれている業界の状況、同業界の人々、そして個人的な欲求などあらゆるものが相互に影響し、キャリアに対する漠然としたイメージを持つ。

しかし、それらも時代が変わり年齢を重ねることでイメージは変化するのであり、定期的に確認する場が必要となるだろう。

いずれにせよ、組織においては「キャリアの現実」が存在する。年功序列、終身雇用制のもとで基盤を築き上げてきた日本の社会が、新しいキャリアのあり方を模索し、これまでにない道を開拓することは容易ではない。

実際問題として、給与が高く待遇が厚い大手企業においては、多くの場合、旧来のキャリアイメージが根強く残っており、優秀な人材が集まってもその中でしかキャリアの可能性が示されないからである。

また、中小零細企業においては、IT活用の推進が遅れていたり、キャリアに対する理解や情報が頭にない経営者も多く、大きな課題であると考えられる。

今後の少子高齢化、一方で、ワークライフバランスが求められる社会において、日本人の望むべくキャリアのあり方は変化を迫られざるをえない。

本説明文は(株)若水の作成によるものです。
転載・転用・問合せをご希望の方は下記フォームよりご一報ください。
また、本説明文は弊社の解釈にもとづき執筆されています。
雑誌記事や論文等による学術性を保証するものではありません。

お問い合わせはこちらからお願いします。