組織の業績は、業務を担う力(労働力)の質に依存する。
そして、業務を担うのは基本的に人であり、どのような人材を採用するかが業績に直結すると考えてよい。
したがって、人材の質は組織の業績を左右する。
もし能力の低い人材を採用してしまえば、モチベーションを上げる仕組みや効率的な業務設計がなされていたとしても、そのメンバーのパフォーマンスは上がらない可能性が高い。結果として、組織の業績は上がるどころか、下がってしまう。
採用候補者の質やレベルを見きわめ、採用後にそのメンバーが優れたパフォーマンスを発揮するためには、大前提として優れた採用プロセスが必要となる。
では、組織はどのような採用プロセスを踏むべきか。ここではまず一般によく行われる面接を取り上げる。
採用面接の重要性
組織にメンバーを受け入れようとする場合、面接は広く、かつ、頻繁に用いられる手法である。
面接は非常に重要視されており、権限を持つ人物が候補者に会ってから最終的に採用の可否を決める。
書類選考や適性検査、筆記試験などは大量の応募者を選別し、採用業務を効率的に行うために実施されるが、その次のステップでは必ずといってよいほど面接が最後の関門として用意されている。
したがって、面接が採用の決定に大きな影響を与えており、組織も重視していることは事実である。
採用面接の有効性
面接はどのような場合に有効なのだろうか?次の3つについて調べる場合、最も有効であると考えられている。
①応募者がどれくらい知性的であるか
②応募者はこちらの採用に関してどれくらいモチベーションがあるか(志望度がどの程度高いか)
③対人的なコミュニケーションスキルがあるか
この3つが、採用後に行う仕事のパフォーマンスと結びつくことが明らかである場合、面接は特に有効となる。
したがって、経営幹部や上位の中間管理職を採用する際には、必ず面接が行われる。
また、パフォーマンスの予測だけでなく、面接によって応募者と組織文化との相性を見ていると言ってよい。
組織の既存メンバーとうまくやっていけそうか、トップからはどう見られるか、上司になるメンバーと仕事が進められそうか、組織の雰囲気に合うかどうか、などが面接において見られていることは疑いない。
面接への疑問視
一方で、ある応募者が、いくらキャリアを積んでいたり、試験の点数がよかったりしていても、面接での印象が悪ければ候補から外されてしまう。
逆に、その人物が決して組織が望むパフォーマンスをあげられるような優秀な人材ではなかったとしても、面接でのテクニックを身につけていれば採用される。
入社してしまえば、後の祭りである。ミスマッチが起きたとしか言えない。なぜこのようなことが起きてしまうのだろうか?
それは、面接が合理的に行われていないからである。
たとえば、面接で短い時間の中で、面接官が特に基準もなく適当なさじ加減に頼って質問を投げかけ、それで採用を決めてしまう場合がそれに当たる。
面接のトレーニングを積んでいない面接官は、さまざまなバイアスを抱えており、面接で得られる視覚的な情報、耳から入る情報に対してゆがんだ見方をする。
このような状況では、応募者の将来のパフォーマンスを予測することなど不可能に近い。
たとえば、バイアスを持った面接官は自分と似た考え方をする応募者を採用しようとする。さらに、マイナスの情報を、プラスの情報よりも重視してしまう。
さらに、面接の順番によって採用判断が変わることなども当てはまる(面接に慣れてくると、後の面接の方が見方が厳しくなる、など)。
したがって、面接が合理的に行われているかどうかを検証しなければ、採用プロセスが適正に踏まれているかどうかは疑問である。
面接時の3つのポイント
組織は、次の3つの点に注意して採用面接の仕組みを設計しなければならない。
①面接官の質問を揃える(標準化する)
②面接官が同じ方法で質問への回答を記録する
③応募者の評価基準を統一する
このようにシステマチックに採用を設計し、さらに面接官がバイアスを克服できるようにトレーニングすることで、採用プロセスは一定の程度で合理化されると考えられる。
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