評価面談が気まずい場合
評価面談は、評価者がメンバーに対して業績評価の結果を伝える、ひとつのコミュニケーションの機会である(考課面談とも呼ばれる)。
評価される者の内容がプラスで、さらに昇進や給与・賞与に反映されるパターンは、評価者にとっても非常にやりやすい。
しかし、評価がマイナスの場合や苦手とする相手に対する面談は、上司にとって気まずいものでしかない。
そもそも、その評価をしたのは自分である場合が多かったり、努力はしたものの全体の調整やオーナーの一存でマイナスに転じるケースもあったり、結局嫌われる役になってしまい、説明も難しい。
評価者にとっては複数のうちのひとつの評価であっても、あるメンバーの評価はその人にとってただひとつの評価であるから、余計に複雑である。
自己防衛
評価者自身が、保身や部下との対立を恐れるあまり、一歩踏み込まずになんとなく面談をしてしまったり、重要なポイントを伝えずに済ませてしまうと、評価をされた側の不信感がさらに募ってしまい、今後の人間関係にもマイナスの影響を与えかねない。
また、もし相手のマイナスのポイントや改善点を伝えられたとしても、「自分はそんなことない、一生懸命やっている」「○○さんはどうなんですか、自分だけが言われるのは納得できない」などと自己防衛に陥る可能性が高い。
元々給与が低かったり、休日条件などの待遇が悪かったりすると、「だいたいこの会社は…」など、メンバーが自分を改善するどころか非難の矛先を上司や組織に向ける結果になってしまうこともある。
自己評価>周りの評価
あるメンバーの評価が、組織全体の位置づけからすると平均よりやや下であったとしても、そのメンバーは「私は下から数えるよりも上位から数えた方が速いところにいる」と考える可能性が高い。
また、厄介なことにプラスの評価であっても「それでは足りない」と考える人もいる。
対策を考えるための3つの前提条件
以上のことに対応するためには、前提として3つの条件を整えておく必要がある。
1.評価制度が公平である
評価される側が、評価制度そのものに不信感を抱いている場合は、いくら言葉を尽くしても納得は得られがたい。評価する側とされる側の間だけでなく、プラス評価をされたメンバーとマイナス評価をされたメンバーの関係も悪くなる可能性があるだろう。
評価の仕組みと方法が透明であり説明が十分になされていることや、適正に手続きがされていると感じられることが大きな前提となる。
2.面談者が誠実である
面談者が不誠実で、好き嫌いや保身で面談の質を下げたり、一方的な非難や愚痴の場になれば、面談を受ける側はさらにストレスとなる。これでは、制度のバランスを損なう結果しかない
面談者に対しては、メンバーにが面談を生産的で有意義な場であると感じてもらうように研修や訓練を行うことで、一定の質が保たれることにつながる。
研修では、面談を単なる一方的な評価の場とするのではなくて、評価結果をきっかけとして次をどのようにするか、支援的な立場で接するにはどのようにするかといった内容が望ましい。
3.評価面談以外のコミュニケーションの機会がある
顔も合わせたことがない上司や自分の仕事を知らない相手から評価を受ければ、メンバーは評価に不満を持つ。
また、忙しいため「どうせ面談があるから」と日々のコミュニケーションをおろそかにしていれば、面談をうまく軌道に乗せるのに時間がかかったり、肝心なことが伝えられずに終わる場合もある。
普段から上司が部下の仕事を支援するつもりで、どういった行動が望ましいか、どのような仕事の進め方を心がければよいかなどを普段から心がけていれば、メンバーとしても評価への納得の程度は高まりやすい。
評価制度をなくす
業界の状況や会社の個別的な事情、制度の欠陥により、評価制度が機能していない場合もある。評価の目的が昇給や昇進につながるとしながらも、実際には見込みがまったくないパターンがそれに当たる。
また、実際の昇給は年次や序列で決まっていて大きな変化がなく、昇進も評価制度には関係のない項目で決められる場合(昇進試験の結果など)、何のための評価なのかを見直す必要があるだろう。
評価をする側も、される側も「意味がない」と思って無為に時間を過ごすよりは、ほかの生産的なことに時間を使うか、評価制度を組織の活性化の機会としてとらえ直してまったく異なる制度を構築した方が組織にとって有益だろう。
組織の規模にもよるだろうが、評価制度そのものをなくしてしまい、日々のコミュニケーションを充実させることにつなげたり、昇給や昇進のあり方をもっとシンプルな方式にする機会をつくることが、良い方向に進むきっかけとなるかもしれない。
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