良い評価スキルを身につける
評価制度の重要なポイントは、評価者に公正で正確に評価をしてもらうことである。
評価プロセスやシステムがいかに素晴らしくても、評価にムラがあったり、バランスを欠いていたりと、最後は人の問題に行き着いてしまえば身もふたもない結果となる。
評価者が良い評価スキルを身につけ、優れた評価者になることで組織に公正感や納得感がもたらされるだろう。
偏見と誤りに注意する
評価スキルといってもツールやフレームワークを利用するわけではなく、人間が持つ偏見(バイアス)を捨て、誤り(エラー)を防ぐことに重点を置く。
評価者訓練では、次に挙げる偏見や誤りについて認識する機会を持ったり、行動の評価を重視する場合には「行動」と、「人格」や「好き嫌い」とは別に考えて評価を判断する訓練を行うこととなる。
ハロー効果
あるメンバーを評価しようとするときに、そのメンバーの目立つ点に引きずられてその他の項目に対する評価も影響を受ける、きわめて人間的な偏見のひとつである。
「ハロー(halo)」とはよく仏像や宗教画に描かれる人物の背後に射す後光や光輪を意味する。後光に目が行ってしまい、本人の姿をよく見れずに何もかもが良く見える効果が生じる。
仮に、メンバーのひとりにエリート大学出身者がいる場合、実際の仕事ぶりや勤務態度、人格面などそれぞれに独立しているはずの項目が、「勉強ができるから」という理由で全体の評価が高い方へ偏ったり、あるいは、たまたまのミスが目についたために「○大のくせに」とその逆へと傾いてしまうケースが当てはまる。
評価する人数が多かったり、時間がなかったり、接触や観察の機会がなかったりするとハロー効果は起こりやすい。
自分の偏見について認識し、評価基準にしたがって客観的に評価を行うことが求められる。
寛大誤差(寛大化傾向)
直属の上司が部下メンバーを評価をする場合、全体として評価が甘くなってしまう経口を示すことを指す。
寛大誤差が生じると、我が子かわいさのあまり、あるいは、我が身かわいさのあまり、5段階評価でつい4を多くしたり、ひとつくらいは5を、など基準をないがしろにしたり、部門全体のバランスを考えずに評価を偏らせてしまうことがある。
また、全体としてかなり厳しめに評価をして全体として2を多くしたり、「最近の若い奴はなっとらん」などと1を増やしたりする厳格化傾向も逆のものとして挙げられる。
最終的に組織や部門全体でバランスがとられる仕組みになっていればよいが、制度設計が失敗しているとバラつきがあるままで進んでしまう。
あくまでも基準に従い、何を評価すべきか明確にしたうえで評価することが重要となる。
入手容易性バイアス
身近にある情報や最近の出来事から物事を判断してしまう偏見。
評価期間が長くなるほど過去のことは忘れられて、最近の出来事で評価されてしまう場合や、物理的に離れているメンバーの評価よりも接触する機会が多いメンバーの評価の方が高くなる傾向が当てはまる。
継続的な注意が必要
上記の偏見や誤りは、その存在を知ればその場で修正することができる。
しかし、時間の経過とともにやはり人間が本来的に持つ性質に戻ろうとしてしまうので、評価の実施前など定期的にアナウンスすることで、評価を正しく、正確にすることが可能である。
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