評価をどのように行うか?
メンバーの業績をどのように評価するのが有効だろうか。
組織によっては、評価のタイミングを四半期に一度と頻繁に行うところもあれば、一年に一度だったり、評価があったのか無かったのかさえもよくわからない組織もある。
頻繁に評価を行う組織では、管理職や経営者の仕事の大半が評価のために費やされ、何のための評価制度かわからないといった不毛な例もある。
また、評価手法が設けられていたとしても、実際にそれがどの程度意味があるのか不明であったり、もはやコミュニケーションを取るためだけに評価面談を行って普段のコミュニケーションを怠ったり、評価の機会が形骸化しているケースも見られる。
評価制度全体の設計も重要ではあるが、ここでは一般的に用いられている具体的な方法を挙げる。
業績記述法
メンバーが自分の強みや業績、今後の意気込みや計画などを記述して上司が評価する方法。
最も簡単であり、トレーニングも不要だが、「作文能力」が優れている人ほどよい評価を受ける可能性があることには注意が必要である。
重要行動評価法
メンバーのこれまでの仕事ぶりで、特に印象付けられる行動について評価者が書き記す方法。
たとえば、業務効率化につながるアイデアを取り入れたところ、これまでのやり方が改善されて、作業時間を減らすことに成功した、などが当てはまる。
メンバーの行動が、効果的であったかそうでなかったかを考えるのであって、メンバーの性格や特徴を書くのではない。具体的な行動に焦点を当てるやり方である。
重要と考えられる行動をリスト化することで、上司がメンバーに何を求めているかが明文化され、メンバーはどのように行動を改善したらよいか、望ましい行動が何かを理解できる。
評点法
いわゆる、通信簿(成績表)の仕事版である。
出欠、遅刻、勤務態度、主体性や行動力などの特性、会社への忠誠度、チームワークなど、評価項目のリストについてメンバーの点数をつけ、その評価点を合計する。
主に五段階評価が用いられ、1(全くできていない)から5(非常によくできている)の点数を評価者がつける。
基準が明確であり、定量的にデータが蓄積されるため、比較の材料にもなる。また、記述量が減るため効率的に行えるというメリットがある。
一方で、評価者の状況(時間のゆとりや好き嫌い)が色濃く反映される可能性もあり、評点の根拠を明確にしなければ、メンバーのモチベーションが下がる結果を招くかもしれない。
行動評点法
上記の重要行動評価法と評点法を組み合わせたやり方で、メンバーに与えられた職務についての望ましい行動例がリスト化されており、評価者は実際にどれに該当しているかを判断し、得点をつけていく。
行動評点法では、リスト化される行動例には次のポイントが必須となる。
- 明確である
- 観察ができる
- 測定ができる
職務についての望ましい行動例や効果がないので望ましくないものについては、業務に実際に従事しているメンバーから挙げてもらい、複数から漏れ・偏りの無いようにリスト化する。
さらに、それら重複のないようにまとめた要素をカテゴリ分けして、難易度のレベルに応じて分類することで、体系的で、具体的な行動評価項目ができる。
日誌記録法
もし評価が一年に一度しかない場合、評価者は何を頼りにメンバーを評価するだろうか?
人間の記憶はいい加減であり、半年前のことよりも3ヵ月前のことを、3ヵ月前のことよりも1ヵ月前、1ヵ月前よりも昨日や今日のことをよりよく覚えているものである。
評価してもらう側も、日々の忙しさに追われて月日が経つと過去の栄光が薄らいでしまうし、記憶があやふやになってしまう。
より新しい記憶や出来事によって評価が決められるのではなく、期間中に業績を上げた人が適正に評価されるためにも、評価対象となる重要な行動を日々記録しておくことで、評価の精度を上げることができる。
評価者は、メンバーの特徴や性格というあいまいなものではなく、業績に結びつく行動に注目するため、ミスやバイアスを防ぐことができる。
もちろん、毎日記録することが求められるため手間はかかるが、日報の一部か、日報の代わりとして行えばデータは蓄積されるし、中身のない日報が少なくなる可能性は高い。
複数評価
フィギュア・スケートやシンクロナイズド・スイミングなどのスポーツでも採用されている、複数の評価者による評価手法である。
複数の者が評価を行うことで、評点が正規分布に従って平均的なデータが得られる。また、最高の評価と最低の評価を排除することでより正確な評価が期待できる。
選択的評価
メンバーが持つ専門性に応じて、その分野についてのみ判断する方法。
たとえば、技術力が高い従業員については、製造やメンテナンスの技術分野において「判断力」や「緊急事態への対応力」、「作業を効率的に進める力」、「作業環境を適切に保つ力」などの専門的な評価項目を基準にする。
逆に、営業職で評価されやすいような「説明がうまい」「はっきりと話せる」などの項目は除外するということになる。
この評価方法では、専門性が理解でき、なおかつ、日ごろから行動を見ている者でなければ評価できないため、直属の上司や同僚が評価者となることで正確なデータが得られる。
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