何を評価するか?
組織が何を業績評価の対象とするかによって、メンバーの行動は大きく左右される。
たとえば、営業部で一日に訪問した会社数を基準に評価される場合、従業員は一日に自分がどれだけ会社をまわったかに関心を持ち、実際の商談内容や見込み客については注意が払われない。
売上のみで評価される場合も、従業員の行動はあらゆる手段を使って売上を立てることにエネルギーを注ぐ。
実際には、そのような単純な方法で評価が行われることは少ないと考えられるが、業績評価の対象を何にするかによって従業員の行動に影響を与えるという点は重要である。
組織は、いったい何を業績評価の対象とすべきだろうか?
業務の成果
プロセスや創意工夫などはどうでもよい、結果さえあればよい、と考える組織にとっては、個人が挙げる成果を評価することになる。
売上高、訪問顧客数、獲得名刺数、改善数、生産数、コスト、ミスの数など、数値化されるものが対象となる。
プロセス
多くの場合、メンバーの「ある活動や成果が、この業績に結びついた」というように直接特定することは難しい。
チームの業績や大きなグループで一つの役割をこなしている場合は、特に当てはまる。チームやグループ全体の業績を評価することはできるが、どのメンバーが具体的に業績に貢献したかを数値化することは不可能に近い(もし個人の貢献が明確に可視化できるならば、それはチームワークやグループである必要はないかもしれない)。
このような場合、メンバーの評価は結果ではなくてプロセスや行動に重点が置かれることになる。
たとえば、情報共有の速さや他のメンバーへの支援、創意工夫、アイデアの実現、チームへの前向きな働きかけ、さりげないケアやサポート、わかりやすく意味のある報告、接客態度の良さ、気遣い、遅刻・欠勤の数などが対象となりうる。
メンバーの特徴
かなり主観的な評価にはなるが、メンバーの性格や雰囲気などを評価基準として用いる企業もある。ワンマン創業者の会社で、人事制度や評価基準が整備されていないところなどが当てはまる。
たとえば、「明るい」「好感が持てる」「元気がよい」「しっかりしている」といった、業績と直接関係があるかどうかわからないものも、評価される。
また、「かわいい」「自信がない」「よくやっている」「デキる」「学歴がある」など、業績やプロセスとどのように結びつくかあいまいであったり、実際は関係がないところも評価対象とされることはある。
評価基準として、成果やプロセスに比較すると疑問視され、弱いと考えられるが、現実として起きることは無視できない。
メンバーにとっては、評価される側に入ったらよいが、努力して成果をあげたにもかかわらず、評価されない側に入った場合はたまったものではないだろう。そのような不公平感はモチベーションの低下につながるため、他でも通用する優秀なメンバーは離職する可能性が高い。したがって、評価制度を明確化して、何を期待しているかメンバーにわかってもらう必要がある。
しかし、メンバーの特徴で評価しているなどとはとても口に出して言えないような組織文化の場合は、無理矢理制度をつくってごまかすか、実質運用が別立てという暗黙の了解が生じることになる。いずれの場合も公平性を欠いてメンバーをあざむくことになり、本質的に有効とは考えにくい。
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