精神性(せいしんせい)
精神性とは、人には内面的な生活があることを認識し、自らが所属する共同社会において有意義な仕事をすることで、そのような内面的な生活を充実させることができるとする考え方である。
精神性を重視する組織文化では、人は頭と心で考える存在であること、自分の仕事に意義や目的を見出そうとすること、自分以外の人とかかわりを持ち、共同社会の一メンバーでありたいと望んでいることを認識する。
これまで、ビジネスや組織経営においては精神性をことさらに取り上げられることがあまりありませんでした。しかし、人の感情を理解することで、組織における人々の行動をより理解することにつながることがわかっている。
精神性はなぜ必要か?
それではなぜ、精神性についての議論が現代で高まってきたのか?
様々な理由はあるが、主に次に掲げることがポイントとなる。
- 不安定な生活ペースから来るプレッシャーやストレスに対してバランスを取るため
- 一人親家庭、地理的な移動、一時的な雇用、対人間の距離を生んだ新技術など、現代のライフスタイルにより、多くの人が共同社会の欠如を感じ、人との関わりやつながりを求める欲求が高まっている
- 特に年齢層が上の世代で、自分たちの生活の中に何か特別なものを求めている
- 多くの人が必要に迫られて仕事中心の生活を送っているが、仕事の意義について絶えず疑問の念を抱いている
- プライベートな価値観を仕事生活にも反映させたいという欲求
- 経済的に恵まれた時代には、多くの人に最大の可能性を模索する余裕も生まれるから
つまり、時代の変化によって現代社会におかれた人々の感じ方や価値観が変わってきていることによると考えられる。
時代と人の変化に対応するため、精神性はひとつの重要なキーワードとなっている。
精神性を重んじる文化の特徴
精神性を重視する組織と、そうでない組織の違いについては、次の5つの要因があるとされている。
1. 目的意識が強い
精神性を重視している組織は、有意義な目的を文化の中心に置いている。利潤も重要であるとしながら、最も価値を置く基準ではない。
2. 個人の成長を重視する
人間は価値ある存在であると認識している。組織メンバーにただ仕事を与えるだけでなく、彼ら・彼女らが絶えず学び成長していくことのできる文化の構築を目指している。また、人材の重要性を認識して雇用保障にも努める。
3. 信頼と開放性
相互信頼、誠実さ、開放性を備えている。経営者や管理職は自らの過ちを認めることを恐れず、部下、顧客、取引先に対して非常に率直な態度で臨む傾向にある。
4. 組織メンバーへの権限委譲
精神性を重視する組織は、高い信頼関係が存在し、従業員が学び成長することを奨励する環境が整っている場合、経営陣は業務における大半の意思決定権をメンバーに委譲することになる。
精神性に基づく組織の経営者は、部下やチームに権限を委譲することに不安を抱かない。部下が思慮深い良心的な決断をくだすと信じているからである。
5. 感情表現に対する寛容さ
組織メンバーの感情を抑制しない。組織はメンバーに対し、自分自身であること(アイデンティティー)、つまり自分の気分や感情を表現することを認めている。
精神性と利益は両立するのか?
感情や仕事の意義・目的などのソフトなテーマが、利潤の追求というシビアなものと両立可能なものかどうかは、経営者や投資家にとって大きな問題となる。ケースは少ないものの、両者はかなりの割合で両立可能であることがわかっている。
ある調査研究によると、精神性に基づく手法を導入した企業は生産性が向上し、離職率が大幅に低下したという。また、別の研究では、従業員に対して精神的成長の機会を与えた企業は、そうでない企業よりも高業績を上げることがわかった。
さらに、組織における精神性が創造性、従業員の満足度、チームの業績、組織のコミットメントによい影響を与えることが報告されている。
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